フランス・ポルトガル・ベルギー合作映画。「母を訪ねて三千里」系ストーリーの、ロード・ムービーの傑作だ。生命の尊厳と自立がテーマなんだろうか。 ブリュッセルの中学生(だと思う)マリーはベンの子を妊娠するが、別れたばかりのベンは取り合わない。生むべきか、中絶すべきか、悩むマリー。マリーに優しく接した別の男性が交通事故で死ぬ。マリーはその男性の息子トニオ(5~6歳ぐらい)を別れた実母に引き合わせようと、トニオを連れて実母のいるポルトガルまで、フランスやスペインを越えていく旅に出る。主演のマリー・ジランのみずみずしい存在感と演技が素晴らしい。当時は子役と言ってもいいぐらいのミドルティーンのジランだが、少女の純粋さと同時に、既に性的に魅力ある「オンナ」を表現できている。
望まれずに生まれてきたトニオを連れて行く旅の案内役(道連れ)として、マリーのような出産か中絶かで悩む女の子を選んだのは、作者の意図的な設定によるものだろう。映画の鑑賞者がクリスチャンではない典型的日本人である場合、もしヨーロッパのキリスト教的宗教観(特に中絶を是としないカソリック)の背景や教会の存在意義を少しでも理解できているならば、この映画への観方や思い入れも相当変わってくるものと思う。是非は別にしてね。そして旅によって意識される彼女の今後の採るべき道は? 結局自分の子を産むのか、自立できるのか、果たして・・・・。