アル・パチーノ主演。彼や脇役陣の演技自体は素晴らしいものの、基本的設定や脚本、演出などがまるでダメ。刺激的なら何でもいいわけじゃないだろうし、その刺激も生ぬるい感じがする。音楽もよくない。ライブ演奏シーンを除いて音楽の存在感すらない。サスペンス度が中途半端でどっちつかず。恋愛映画でもアクション映画でもないが、サスペンス映画としても消化不良。日本語タイトルもダメ。原題は「People I know」--俺は顔が広いぜ、という意味合いで、その顔の広さが仇になる映画なのに、この邦題はセンスなし。というより、こんなの売れるわきゃあないだろう、と最初っから高をくくったような「やる気のなさ」が垣間見られる邦題だ。いずれにしてもパチーノは出演映画を選ぶ目がないのか? 特に’80年代以降の出演作は「スカー・フェイス」や「セント・オブ・ウーマン」などの例外的名作を除いてほとんどが駄作ばかり(いちいち挙げるのも悲しくなる)。彼の代表作がおおよそ’70年代に集中するのは仕方ないにしても、僕としては寂しい限り。まあ、彼の場合、時々映画に出て稼いだお金を、好きな舞台(芝居)製作につぎ込んでいる、というのはギョーカイでは有名な話。パチーノ自身、映画の中身はどうでもいいとまでは考えていないんだろうけど、彼の大ファンなのでやっぱり惜しいと思ってしまいます。