さすが、SABU監督、やってくれました。
ぐいぐい引き込まれる素晴らしい脚本。
はかなくも美しい、ノスタルジックな干拓地の撮影風景。
これを救いようのない物語とみるか、どこかに救いのある作品ととらえるか。
いずれにしても重く、痛々しく、切なく、そして衝撃作であることに変わりはない。
前半は主人公シュウジのナレーション。
後半からは、この物語の狂言回し役、「神の視点」で主人公たちを見守っている神父(豊川悦司)のナレーションに。
孤独、生と死、
誰かとつながっていたい、
私を殺してください、
誰か一緒に生きてください、
これらのメッセージは、重いけれど、映画の重要な部分を占める。
主人公シュウジはエリを背負ってどこへ走り去りたかったんだろう。
この作品では、タイトルとは逆に、(「弾丸ランナー」など)いつものSABU監督作にあるような、疾走感は、実はない。
走りたいのに、走れない物語だからだ。
冒頭のエピソードしか出てこないのに、圧倒的な存在感を出すSABU作品の常連、寺島進は相変わらずいい。
そして最も印象的だったのが、中谷美紀の演技。
中谷美紀はすごい。 大人の、ヤクザの情婦を見事に演じきっている。
難点は、主人公も含めて中学生役の少年たちの演技が下手なこと。
自然でいいんだろうけど、セリフ回しがもうちょっとなんとかならないか。
けれど韓英恵はいい。 この女優さん、将来もっと大化けして欲しいな。
主演の手越祐也の演技はお世辞にも上手とはいえないけれど、ただ、目つきがすごくいい。 この目つきが主役を射止めた最大の理由ではなかろうか。
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