2009年1月25日(日) 朝。
前回と逆に、今度は僕のたっての希望で、
王子(幼稚園6歳、体つきは大きく小学2、3年生と間違えられることもしばしば)と2人、
葉山、鎌倉の海岸方面へドライブ。
もうすぐ、6年以上お世話になった、
この黄色い車に別れを告げる。
だから、最後(になるだろう今回)のドライブに
王子を連れて鎌倉の海にどうしても来たかったのだ。
都内の自宅から第三京浜、横浜横須賀道路を経て、
1時間ちょっとで逗子、そして葉山に着く。
車で葉山・鎌倉まで来るのは2~3年ぶり。
(いつもは電車で来て酒を飲んでいるから。)
車中で最初は小田和正や加山雄三、
「76.1 InterFM Weekend Cruise」などをかけていたけれど、
助手席に座る王子の希望で結局、
ウルトラマンの主題歌シリーズに。
仕方あるまい。
葉山マリーナを通り過ぎる頃、
少々冬の海に否定的だった王子も興奮気味に。
渚橋を渡っているとその左側に、陽に輝く海と、
空気が澄んでいるからかキレイな富士山がくっきりと、 見える。
海と富士山、 なんて美しいんだろう。
渚橋を渡る前か、渡った後だったか、その辺りで王子が突然、
なかなかのセリフを発する。
「ね、音楽止めて!」
「え?」
「窓も開けて」
「いいよ、いいけど、どした?」
「波の音が聞こえないもん。 窓開けないと、海の匂い、しないから・・・・」
「あぁ・・・・ そうか。 そうだな」
ときどき、彼は、
当たり前といえば当たり前だけど、
感性のするどいことを言う。
音楽を止め、窓を開け、
車のエンジン音以外は特に音は聴こえない空間で、
波の音を楽しむ。
富士山の美しさを、めでる。
穏やかな、午前中の冬の海。
逗子のトンネルを抜け、
材木座海岸をゆったりと走る。
・・・・・ 由比ヶ浜の地下駐車場に車を入れ、
海岸で遊ぶ。
風が強く、冷たい。
王子は、 走る。
そして貝殻を取る。
興奮している。
大声で笑う。
僕は時々ぼーっと海を眺める。
2人は、駆ける。
止まる。
波打ち際を微妙に歩き、また走る。
2人でコンクリートの階段に座って
持参したポットの暖かいお茶を飲み、
お菓子をボリボリと食べる。
海の方角を指しては、あの辺りの空にいつも月がきれいに見えるとか、
後ろのR134沿いにあるあのカフェとあのバーはパパがよく利用するとか、
由比ヶ浜の昔の由来や鎌倉幕府の話、
そんなことを大人の友人に接するように、王子に話す。
(僕は王子を普段、場面によっては子供扱いしない(できない)でいるけれど、
それがホントは良いのか悪いのか・・・・悩むなぁ )
浜辺では意外に人が大勢いる。
「誰もいない冬の海」 みたいな世界とは違って、
今の時代は今日みたいに天気がよければ、
犬を散歩させている人もいるし、
冬場でもボードセーリングやサーフィンの人たちで結構賑わっているんだな。
昔のフランス映画の、
「男と女」みたいな、
誰もいない冬の海のイメージは
決して嫌いじゃないんだけど。
ふと、何かを感じて、
由比ヶ浜の海岸からR134方面を見てすぐ目の前にあるビルの3階、
何度もお世話になっている 「お酒の神様」 という名の
オーシャンビューのバーに行ってみる。
なぜだか行ってみたくなった。
土日なら昼ごろにはお店を開けるはずだけど、
まだ開いてないことは分かっているのに、
なぜだか無性に行った方が良いような「気」がして・・・・・。
・・・・・・・ 違う。
お店の名前が。
窓ガラスから見える中の配置や家具類が。
同じビルの1階のカフェの前で掃除をしている
キレイなオネエさんに聞いてみる。
「あの、3階にあったXXXXというバーはどうなったんでしょうか?」
「あぁ・・・・ こないだ、閉めちゃったんですよ・・・・ 突然・・・、でしたねぇ・・・・」
「そうですか・・・・」
正直、驚いた。
そして、複雑な気持になる。
自分の黄色い車のお別れドライブでやってきた海辺で、
馴染みのバーがなくなっていたなんて。
いつもお世話になっている和風小料理屋さんにも
もしや開いていたらと、久しぶりにご挨拶しようと行ってみたが、
やはりこの時間帯はまだ閉まっていて叶わず。
なんだか、そういう日なのかな。
王子は途中歩き疲れてぐずっていたのに、
六地蔵の近くで江ノ電が通ったのを観れて嬉しそう。
僕たちは由比ヶ浜の地下駐車場から車を出し、
R134のちょっとした朝の渋滞を、再び逗子方面へ。
渋滞といってもそれほど極端にひどくなくて、
かえって海をゆっくり眺め、楽しむことができる。
ここでも音楽を止め、 車の窓を、 開ける。
相変わらず冬の、いや、海辺の風は冷たいけれど、
空はどこまでも青く、陽射しは穏やかで暖かい。
海、 みなもが キラキラ 光っている。
逗子インターから横浜横須賀道路に乗って東京方面に帰ろう。
鎌倉で酒も飲まずに帰るのは珍しい。
今回は車だから仕方がない。
走りながら車中でオニギリを2人でほおばる。
王子は3個、僕は1個。
彼はよく食べる。
ちょっとした遠足みたいだな。
たった2時間、
幼稚園児の王子と、
動物園などもない、(江ノ島の水族館はたいていはパスする)
単なる海辺に行っただけなんだけど、
不思議な時間と空間を過ごせた気がする。
あの、今はもう存在しない「お酒の神様」という名のバーに感謝しているし、
由比ヶ浜や材木座の海岸にも、
今乗っている車にも、
感謝している。
ありがとう。
「ね、王子、 お酒の神様って、今はどこにいるんだろうね?」
「え? パパ、帰ったらまた飲むつもりぃ(笑)?」
「あぁ、 昨日のワインの残りを、な」
「しょうがないなぁ」
お酒の神様、 探したくなったからさ。
いつか、どこかで、 また出会えるんだろうけどさ。
♪ テーマ曲
「白い砂の少女」 by 加山雄三 ♪
♪ テーマ曲
「明日 あの海で」 by 小田和正 ♪
♪ テーマ曲
「切ない愛のうたをきかせて」 by 小田和正 ♪
♪ テーマ曲
「夢の花」 by Temiyan ♪
関連記事:
「光明寺の調べが 材木座の海岸に届くころ」
「十六夜の月 於鎌倉」
「ゆる~いレゲエを鎌倉で」
「由比ヶ浜に 酒の神 在り」
「京の女に言ふ (2)」
「冬の日の朝」
「雨の鎌倉高校前駅にて(1)」
「雨の鎌倉高校前駅にて(2)」
「雨の鎌倉高校前駅にて(3)」
(今回の記事タイトルは「七五調」でお読み下さいませ)