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月子さんのお話 (4) ~遊郭の夕べ~

2008年4月22日(火) 夕刻。

一週間ほど大阪出張。
空き時間を利用して大阪市西区の九条へ。

僕の実母である月子さん(仮名)は
九条で昭和10年(1935年)に生まれ、
空襲が激しくなって四国に疎開する昭和20年まで、
九条で育った。

月子さんの生地を一度は訪ねてみようとやって来た。

月子さんの除籍謄本で生地の所在地を読み取るも、それは旧住居表示。
現在の住所だとどの辺りになるのか、わからない。

しかも自宅近くの病院で生まれた可能性だって高い。
生地は単なる病院の所在地かもしれない。
けれど九条にずっと住んでいたのは何度も聞かされていたから、
それ自体は確実だろう。


西区と港区(九条は一時期港区管轄だったこともある)の両区役所に電話で尋ねる。


教えられた、おおよその、たぶんこの辺りだろうという場所に、
初めて足を踏み入れる。

商店街のアーケード。
少し奥に折れると、住宅地。
いわゆる、下町。

薄暗くなった路地裏のアスファルトの上で
子供達が無邪気に遊んでいる。

平和だ。

なんて平和なんだろう。

この辺りで焼夷弾の空襲の中を逃げ回った月子さんは、
生きていたらどう思うだろう。

ここには月子さんの全ての原点がある。


・・・・・・ 駅の反対側は、いわゆる昔の赤線地帯、
有名な遊郭があったところだ。

いや、料理組合と名前を変えてはいるが、
今もこの辺り一帯が実質的な遊郭であることに変わりはない。

高架をくぐり、駅の反対側の、そこに行ってみる。


通称、 松島新地。


レトロでステキな瓦葺の2階建ての日本家屋が
いくつも、いくつも並んでいる。
桃色と白のツートーンカラーの灯籠があちこちに。

これら建築物は本当に素晴らしい。

大阪大空襲で全焼したから、今の建物は戦後のものか。
それでも、味のあるとってもいい雰囲気。

それぞれの店の玄関そばの窓際には
若くて美人のオネエサンが1人か2人、
(ホントにレベル高い美人です。)
店を仕切る年かさのオバハンとコンビで座っている。


暮れ六つ時、
ほの暗い妖艶な灯りの中、
僕が前を通るたびにどの店からも、

「お兄さん、遊んでって」
「どうぞ」

などと声がかかる。

その声は、大き過ぎず、小さ過ぎず、
嫌味もなく、なぜか心地良い。

(新宿歌舞伎町の下品な客引きとは大違いなぐらい、粋でステキな声。)

月子さんが僕によく言っていた。

「あなたのおじいちゃんは全然女遊びもせず、
きちんとしたマジメで堅い人だったんだよ」って。

今になって分かる。

たとえ歩いていける近い距離にあっても、
駅の反対側の、松島新地なんぞにあなたの祖父が行くようなことはなかったんだよ、
とでも月子さんは言いたかったのだろう。

子供の僕に、表現を変えて伝えただけだ。

けれど、僕は今、思う。

行ってたって、今の僕なら、別に否定はしない。
嫌な気もしない。
そんな野暮じゃない。

こういった遊郭の世界に対して
世間で賛否両論あるのは承知しているけど、

じいちゃん、それぐらい行ってもいいじゃないか、と思う。

堅すぎるぐらいお堅い祖父のことを考えれば、
遊郭に行ったことがあるぐらいの方が、
かえってヒューマンで人間臭くて、
もっと親しみを感じるだろうから。


1930年代、祖父は旧逓信省勤めで、
(セピアカラーの写真からはいつも)ツィードの三つ揃いスーツを粋に着こなし、
電報(モールス信号)の英語担当をしていた。
電報の英語の文法の間違いを正す役だ。

確か旧制中学の途中で社会に出た祖父は、
英語もフランス語も独学だったそうだ。


逓信省を辞めた後も、祖父の耳にはモールス信号のような音が耳に残っていて、
実際に何かの拍子でモールス信号に近い音が聞こえると、
まるっきり言葉と同じように聞こえるのだ、
と言っていたのを思い出す。

祖父はどんな信号を言葉に変換し、どんな言葉を信号に変換していたのだろう。



・・・・・この一帯は、なんだか不思議な場所だ。

こういった日本家屋を観ているだけでも、むちゃくちゃカッコイイ。
それに、この妖艶で、いかにもアヤシイ雰囲気。

まさか僕自身が、祖父や月子さんの代わりに、
昭和10年ごろにタイムスリップしている、とでもいうのだろうか。

それほど僕の時空感覚は、 狂いに狂っている。

ねぇ、月子さん、
あなたは今頃どこでどうしているんだろ・・・・?

その「今頃」って、いつのことを指してるんだろ?
その「どこで」って、どこのことを指してるんだろ?

僕は僕自身でなくなっていく。
混乱する。

今、祖父が僕自身に乗り移り、
いや、僕が祖父自身になって、この街を歩いている。

この世とあの世の境目に、もう一つのグレイな世界ができあがり、
僕は僕自身でなくなっていくのだ。


・・・・・・ しっかりと、夜の帳が、降りる。

新地の辺り一帯をぐるぐると小一時間も歩き続けたろうか。

酒を飲もう。 この地で。

カウンターだけの居酒屋に入り、日本酒を。


翌日、4月23日は、生きていれば月子さんの誕生日だ。
偶然とはいえ、ちょいと不思議。

出張スケジュールは自分じゃ選べないから、本当に偶然なんだけどね。

熱燗でこの大切なひと時を、祝おう。

僕は僕の祖父となって、
月子さんの父親となって、
月子さんとなって、
そしてふたたび僕自身となって、

祝おう。





黄色い時間は月を青い色に染めた上で、
モールス信号の英語の電文を 切ないラブレターに変換している。



♪ テーマ曲 「between the bars」 by Elliott Smith♪
♪ テーマ曲 「la dilettante」 by hauschka ♪
♪ テーマ曲 「月の鏡」 by 藤原道山 ♪


関連記事:
「月子さんのお話 (3) ~春の残酷~」
「Blue Train」
「ソウル・バーの夜 (4) ~キサス・キサス・キサス~」
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by y_natsume1 | 2008-04-29 16:34 | Moon

雨のシンガポール (7) ~片手だけじゃ音は鳴らない~

2008年3月某日。

シンガポール Day #2 (その3)。

♪ テーマ曲 「Miss Misery」 by Elliott Smith ♪ 

(この曲を何度もかけながら、今回の文章を書いている。 本当に相手は僕を必要としてくれているのだろうか・・・・・、そんな歌詞は、アジアに片思いのような恋をしているくせに素直になれずに斜に構えている今の僕に、ピッタリだ。)

****************

夜9時過ぎ、ゲイランから龍の車でチャンギ空港へ移動する。

食事も買い物も人に会うことも、
全てが濃密な2日間だった。

車の中で龍に聞く。

濃密って英語でどう言うんだ?
squeeze two days (ぎゅっと絞った2日間)か?


あぁ、それなら compact two days かな。


ふーん。 そうか。
お前のおかげでホントに濃密だったよ、今回の2日間は。


そりゃどうも(笑)。
俺はヨシがシンガポールに来たときは、いつもCEOやってやるよ。
お前の世話係、Chief Entertainment Officerだ(苦笑)。



なぁ、龍、
また皆で一緒に旅行したいもんだな。
そう何回も行きたいって訳じゃないんだけどさ。


いいな。 前は箱根の温泉だったろ。
今度は日本のスキー場なんかどうだ(笑)。



いやぁ、龍、オレ、スキーは、ちょっと・・・。

*********


それにつけても、今回のシンガポール2日間は、
濃密ではあるけれど
微妙に何かが違っていたような気もする。

ほんの少しの違いなのだけど、何か、決定的な違い。

歳をとったせいなのか、
興味や好奇心が薄くなったせいなのか、

それが何かは分からないけど、
少し東南アジアが遠くなったような気がする。

今回はほとんど雨で、
涼しくて、熱帯の気候じゃなかったことが、
微妙だけど決定的な違いを感じさせているのだろうか。

ほとんど雨っていっても、たった2日間のことだから
それぐらいはいつもあり得ることなのに。

・・・・・・ 太陽はこの2日間、
         ずっと泣いていた、ということか。

僕にとって、今も東南アジアの匂いや雰囲気が好きなことに、
変わりはないのだけど。


龍から間接的に聞いたのだが、
龍のシンガポール人の同僚(男)のエピソードがある。

その人が以前、ある娼婦と会話した時のことだ。

「キミをすごく気に入った。 気持ちよかった。 スタイルも顔もタイプだし」

「ありがとう。 でもね、あなたが私を気に入ってくれたのなら、そういうときは相手(私)も同じような気分・・・じゃないかな。 私も気持ちよかったわよ(笑)。 よく言うでしょ、手を叩いて音を出すには両方の手が必要だって。 片方だけじゃ、決して音は、出ない。 それと、おんなじかな・・・・・・・」



・・・・・・ 僕はこの話を聞いて、

もしかしたら娼婦というものは、
世界で最も文学的でユーモアに富んだ存在の一つなのかもしれない、

とさえ思った。


僕がこの東南アジアを、南洋を、好きでいる限り、
東南アジアの側も、僕をいつも温かく受け入れてくれるといいのだが。

************

・・・・・・ 龍の車はチャンギ空港のT2に到着する。

車を停めたせつな、
僕も龍も同時に同じことを口にする。
家族によろしく伝えてくれ、と。

龍は苦笑する。 同じこと言ってるな、俺たち。

じゃ、またな。

握手して別れる。

僕は右手でスーツケースを引く。

左手には、
ホテルでチェックアウトする時にもらってきた小さめの青リンゴが1個ある。

青リンゴ。

今のうちに食べとかなきゃな。
果物は、原則持ち込み禁止だからな。
と思いつつ、搭乗手続き。

パスポートよし、ボーディングパスよし、
携帯電話の電源は切って、村上春樹の文庫本を持ち・・・・。

ほろ酔いの赤ワインが今この瞬間もボサノバと甘美なデートを続けているといいなぁ、
と思いながら、

出発ゲートをくぐる。


・・・・ おっと、 青リンゴ、 どこだ? どこいったっけ??

♪ テーマ曲 「Miss Misery」 by Elliott Smith ♪

(終わり)

関連記事:

「箱根の山は まだ肌寒く」

「雨のシンガポール (1) ~ミッドナイト・リユニオン 深夜の再会~」
「雨のシンガポール (2) ~屋台街で朝ごはん~」
「雨のシンガポール (3) ~赤ワインとボサノバがデートする~」
「雨のシンガポール (4) ~赤線地帯~」
「雨のシンガポール (5) ~肉骨茶と誕生会と~」
「雨のシンガポール (6) ~赤線地帯 再び~」 
「雨のシンガポール (7) ~片手だけじゃ音は鳴らない~」
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by y_natsume1 | 2008-04-26 21:29 | シンガポール

雨のシンガポール (6) ~赤線地帯 再び~

2008年3月某日。

シンガポール Day #2 (その2)。

夜、龍の車で土産物を買いに出る。

ボー・ティー(BOH:Best of Highland Tea)のマンゴー・フレーバーのやつ。
肉骨茶(バクテー)のスープの素。

月餅(ムーンケーキ)は大体8月~9月の季節モノだから見つけにくい。
空港のDFSで買うことにする。

2005年にシンガポールに来た時に気に入ったRotiboyを思い出す。

あのパン屋は?
と龍に聞いたら、もうビジネスを撤退して、なくなっていた。
残念。

薄利多売の事業らしく、シンガポールで急激に拡大しすぎたせいかもねってさ。

車はゲイラン地区へ。

娼婦たちが大勢たむろする、
アヤシイ夜のストリート。

小雨の降る中、車を降り、
少し路上を歩いて露店のある辺りへ。

ここで最大の目的、ドリアンを喰らう。
やっと実現。 嬉しい。 うまうま。

僕がマレーシアに駐在していた頃からの、大好物。

味がどうのこうのっていうよりむしろ、
クセになってるっていう方が表現としては的確かも(ニンマリ)。


そろそろ雨も上がるだろうか・・・・。

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♪ テーマ曲 「Waltz #2 (XO)」 by Elliott Smith ♪
♪ テーマ曲 「Needle in the Hay」 by Elliott Smith ♪
♪ テーマ曲 「Angeles」 by Elliott Smith ♪


(つづく)

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「ゆるゆるとシンガプラ (8) 最終回 ~南回帰線はまだか~」

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by y_natsume1 | 2008-04-20 10:16 | シンガポール

雨のシンガポール (5) ~肉骨茶と誕生会と~

2008年3月某日。

シンガポール Day #2 (その1)。

夜が明ける。
またも雨。
それも、スコールって感じの雨。

ホテルをチェックアウト。

約束の時間通り、龍(仮名)が車で迎えに来てくれる。



今度こそは、と朝飯に肉骨茶(バクテー)を食べに行く。

肉骨茶のスープには俗に白系と黒系というのがある。

白系は胡椒風味のシンガポール・スタイル、
黒系は漢方薬やしょう油風の調味料などで煮込んだマレーシア・スタイル。

僕はどちらも大好きだけど、
どちらかというと、黒系マレーシア・スタイルの方が好き。

シンガポールにいるから今回のは白系。  

うまい! 大正解。
ありがと、龍。

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・・・・・・お店を出ていったん龍の自宅コンドミニアムに。

雨は激しさを増している。

荷物を龍の家に置かせてもらい、
龍の3番目の娘さんの7歳の誕生パーティーで
ユニオンの娯楽施設へ行く。

そこはキッズセンター兼ショッピングモールって感じか。

プレイルーム一室を借り切って、
親戚の子供達を招いて誕生会。

日本人のオジサン(僕のこと)が、なぜか違和感なく溶け込んでいる。
ここで生活してるみたいだ。

龍の娘たち、3姉妹と再会。
相変わらず、上の2人は歌をハモると天使のようにうまい。

長女は12歳で、もう大人びてきている。

「ね、アンクル・ヨシはビール好き? ビール持って来ましょうか?」
とか、
「日本食だと寿司が好き」
とか言ってる。

今回の誕生会で、前にシンガポールに来たときにお会いした、
龍の奥さんのお姉さんやお母さん(龍の義母)、子供たち
 にも再会できた。

ご縁が、あるんだろうかね。
何かの節目に、偶然にせよ、必然にせよ、
なぜかスムーズに会えてしまうということは。


雨はスコールどころではない。
台風かと思うほど強風と激しい雨で、雷も鳴っている。



・・・・・・・夕方、龍の家で食事。
龍のお母さんが作ってくれる、いつもの手料理。

鶏肉の照り焼き、エビのから揚げ、野菜の炒め物、
煮魚、豆腐のスープなどなど。

龍のお母さんは広東系、お父さんは福建系で、
両者とも英語が話せない。
龍の奥さんは広東系。
だからご両親との間では大抵はマンダリン(共通語)で話すのだそうだ。

龍の奥さんが僕に通訳してくれる。

いつもの、シンプルな料理だけどね、ってお母さんが言ってるよと。

そんなそんな。 シンプルな家庭料理こそがありがたいんだから。

お父さんはご飯におかずを少しずつ盛って、
自分の部屋に引っ込んで1人で食べる。

前回僕が訪問した時は皆で一緒に食べたけど、
いつもはこうやって1人で
部屋でTVを観ながら食べる習慣らしい。



・・・・・ 食事が終わり、ご家族にお礼とお別れのご挨拶をする。

お父さんは昭南島(シンガポール)占領時の旧日本軍から習ったカタコトの日本語で、
アリガト、サヨナラ、だ。

いつのまにか雨も小降りになっている。


深夜便のフライトまで時間がある。
チェックインのタイムリミットまでだと、あと2時間ぐらいはあるはず。


土産物を買おうと僕は龍の車に乗せてもらって
コンドミニアムを出発する――。


それにしても・・・・・、
ここでもオパールは見つからない。

太陽が西から昇りでもしない限り、
40年「前」の「未来」にタイムスリップでもしない限り、
満月が同時に9つにでも増えない限り、

見つからないのだろうか。

信じたくない。

ねぇ、オパール、
絶望的な希望は、ホンの少しでも、まだあるはずだろ?


・・・・・ 龍の車は夜のハイウェイでスピードを上げる――。


♪ テーマ曲 「雨の御堂筋」 by 欧陽菲菲  ♪
♪ テーマ曲 「ダンスダンスダンス」 by 宇都宮隆 ♪
♪ テーマ曲 「Squall」 by 氷室京介 ♪

(つづく)

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「シンガポール出張 (8) ~深夜便は今も~」

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by y_natsume1 | 2008-04-18 20:37 | シンガポール

雨のシンガポール (4) ~赤線地帯~

2008年3月某日。

シンガポール Day #1 (その3)。

夕方、ホテルで華人系マレーシア人の旧友フェイ(仮名、マラッカ出身)と待ち合わせ、イーストコーストの、シーフードレストランがいくつもある海沿いエリアへ。

フェイは僕の以前のブログ記事 「ゆるゆると シンガプラ (8)」 では旧友Eとして、 「シンガポール出張(7)」 では旧友Dとして書かれている。  めんどうなので、今回から仮名フェイとしておく。



龍(仮名)たち夫婦はまだ来ていない。

この時だけ、雨はほとんど上がっていて、
海岸沿いをフェイと散歩しながら話す。

僕は彼女には気を遣わずに、割と何でも素直に話せる。

以前勤務していた会社の同期で
最初に出会った14年前からずっとそうだ。

たま~に会えばその時は、僕の仕事上の悩みにも、
けっこう親身になって適切なアドバイスをくれる。

龍もそうだけど、フェイは僕のメンターといってもいい。

彼女は真面目で嫌味がなく、聡明で、
礼儀正しく、そして思いやりがある。

いまだに彼女が独身なのが不思議なくらいだ。
ま、こればっかりはご縁なんだろうけど。

フェイも僕に対しては同じような感覚で、
話しやすいんだそうだ。

彼女は自分の母親に、

僕という日本人の友達がいて、そいつはなぜか肉骨茶(バクテー)みたいなローカルフードが好きで、コロニアルスタイルの建築物が好きで、英語の苦手な日本人駐在員と違って英語話すし、なんか不思議な日本人なのよ、

と説明しているらしい。


フェイの母親は言ったそうだ。
普通の地元の友達でも10年以上連絡してない人だっているだろ、
それが14年も続いてるのかい、結構長いね、
気を遣わないでいられる仲間なんだろうね、友達の中でも・・・・と。

そうね。
そうかもしれない。
お互い、妙に気を遣うなんてこと、考えたこともない。


・・・・・・・・ やがて龍と奥さんがやってきて4人で晩ご飯を食べ始める。

選んだメニューは・・・なぜかいつもと同じになる。

クラブ(蟹)のブラックペッパー風味。
エビのから揚げ。
ベビーカイランのガーリック炒め。
頼んだ魚は売り切れ。
ビール。 ご飯。


食事を終えたあと、
龍の運転する車で皆でGeylangゲイラン地区へ行き、
亀苓膏(グイリンガオ)やマンゴープディングを食べる。

亀苓膏は漢方薬と亀のエキスをゼリーにしたデザートだ。
苦味を楽しむ。
マレーシア駐在時代にはよく食べた。

横浜の中華街で缶詰形式のものなら売っている。


・・・・・・ 再び雨が少し降ってくる。

ゲイランでは
インドネシア系娼婦の吸う甘いガラムの匂いが漂い、
メインランドチャイナからであろう細くて手足の長い娘たちで
あふれかえっている。

ここは政府公認の売春地域で、昔の日本で言う、赤線地帯だ。

商売を仕切っている男たちはシンガポール人ではないそうだ。
大抵はインド系か、大陸(中国)の人間だという。


ここには日本人観光客はまずいない。

日本人駐在員や西洋人も、時々いるにはいるが、
目立つほどの人数が視界に入ることは稀だ。

要するに、日本人はほとんどいない。
だが、僕はなぜかこの街に溶け込んでしまうのだ。


僕はゲイランの猥雑さが、生き生きとした様が、小汚い野性味が、
大好きだ。

もし、ゲイランがなくなったら、
ある意味で僕にとってのシンガポールという街の魅力は
半分以下になるだろう。


ゲイランには娼婦のいる売春宿だけでなく、
安くてうまい屋台レストランがいくつもある。

さすがに病気が怖くて娼婦たちには近づかないけれど、
屋台街のローカルフードを楽しみたくて、僕はよくゲイランを訪れる。


潮洲粥(テオチュウポリッジ)、亀苓膏(グイリンガオ)、
肉骨茶(バクテー)、クレイポットライス、海南鶏飯(ハイナニーズチキンライス)・・・・。

いくつも並んでいる。 それも力強く。

コロニアル・スタイルの、ノスタルジックな建物が
ずっと先まで続いている。

ゲイランの妖しい猥雑さは、
清潔で美しいビル群に代表される
シンガポールの一般的外面(そとづら)のイメージとは違うけれど、

この地区があるからこそ、
皆、生き生きとしているのではないかとさえ、思う。


猥雑さは、
いつの世においてもある程度必要で、
いつの世においても何らかの真実を突いている。

・・・・・・ この夜、
小雨は降ったり、止んだり、だ。

♪ テーマ曲 「悲しき雨音」 by ザ・カスケーズ ♪
♪ テーマ曲 「雨の歌 チェロ・ソナタ ニ長調 作品78」 by マイスキー(作曲 ブラームス) ♪
♪ テーマ曲 「Rain」 by ザ・ビートルズ ♪

(つづく)

関連記事:
「シンガポール出張 (7) ~チャイナ・タウンの休日~」
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by y_natsume1 | 2008-04-13 18:31 | シンガポール

雨のシンガポール (3) ~赤ワインとボサノバがデートする~

2008年3月某日。

シンガポール Day #1 (その2)。

龍と別れ、ホテルに戻る。
シャワーを浴び、着替える。

・・・・・ 雨の午後、コロニアルスタイルの、
とても感じのいい2階建ての白い建物にタクシーで乗りつけ、
1人で、入っていく。

周りには緑があり、音楽はボサノバが流れている。

オーストラリア産の赤ワインは極上で、
こんなにおいしいワインは久しぶりだ。
すぐに   ほろ酔い。  いい気分。

タバコを吸いに、灰皿を借りて中庭の席へ出ると、
魅力的な女性が、
タバコご一緒してもいいかしら、と近寄ってくる。

どうぞ。

パープルの、センスのいいドレス。
紫の靴とおそろいだ。

なかなかいい組み合わせだと思う。


その頃、 雨はスコールのような激しいものではなく、
しとしと降る、静かな雨になっていた。

小雨だ。

ワイングラスを持ったまま少し上の方を見上げると、

椰子の木の緑と、空のミルク色と、 
グラスに入った赤ワインのバーガンディが、

互いに鮮やかな色彩を競い合い、
厳かに祈り、歌っている。

もう一度地上に目を向ければ、

パープル・ドレスの女性の向こうで、
ほろ酔いの赤ワインがボサノバと甘美なデートをしている。

至福の時を迎える。

この至福の時を、 心から 祝おう。

♪ テーマ曲 「赤いセーター」 by 加山雄三 ♪
♪ テーマ曲 「フェリシダーヂ」 by 小野リサ ♪
♪ テーマ曲 「三月の雨」 by 小野リサ ♪

(つづく)

関連記事:

「雨のシンガポール (1) ~ミッドナイト・リユニオン 深夜の再会~」
「雨のシンガポール (2) ~屋台街で朝ごはん~」
「雨のシンガポール (3) ~赤ワインとボサノバがデートする~」
「雨のシンガポール (4) ~赤線地帯~」
「雨のシンガポール (5) ~肉骨茶と誕生会と~」
「雨のシンガポール (6) ~赤線地帯 再び~」 
「雨のシンガポール (7) ~片手だけじゃ音は鳴らない~」


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by y_natsume1 | 2008-04-11 20:13 | シンガポール

雨のシンガポール (2) ~屋台街で朝ごはん~

2008年3月某日。

シンガポール Day #1 (その1)。

午前10時過ぎ、
龍が車でホテルまで僕を迎えに来てくれる。

シンガポールの町には、雨が降っている。

ゲイラン地区に近い所へ行き、2人で朝めし。

本当は肉骨茶(バクテー)を食べたかったのだが、
適当な店がなかなか見つからず、
結局普通の屋台風食堂に。

けれどここもかなりうまいローカルフードを食わせる。

鶏肉の甘辛煮(白いご飯にかけて食べると炊き込みご飯というか、クレイポットライスの味に似た感じになる)。 もんのすごく美味しい。

魚肉団子や豆腐やモツを煮込んだスープ。 
これも抜群にうまい。

スープを注文するとき、龍が
「ヨシはスープが好きだったろ。 ここのはうまいんだ」

そりゃ、僕もスープ好きだけどさ、
元々好きなのはお前さんだろ(笑)。

スープのうまい店は何でもうまいんだって、
僕がクアラルンプールに駐在してた時に
一緒に晩飯食いながら、そう言ってたのは龍の方だ。


なぁ、龍、 オレ、色々あってさ・・・・。 あのことは知ってるよな?

あぁ、オレも今の会社、正社員辞めて、1年ごとの契約社員に変えた。 
XXXXのビジネス・マネジメントをやるんだ。
ヨシもやる(笑)?

まさか。

♪ テーマ曲 「雨にぬれても」 by BJトーマス ♪
♪ テーマ曲 「降っても晴れても」 by フランク・シナトラ ♪
♪ テーマ曲 「雨に唄えば」 by ジーン・ケリー ♪

(つづく)

関連記事:

「雨のシンガポール (1) ~ミッドナイト・リユニオン 深夜の再会~」
「雨のシンガポール (2) ~屋台街で朝ごはん~」
「雨のシンガポール (3) ~赤ワインとボサノバがデートする~」
「雨のシンガポール (4) ~赤線地帯~」
「雨のシンガポール (5) ~肉骨茶と誕生会と~」
「雨のシンガポール (6) ~赤線地帯 再び~」 
「雨のシンガポール (7) ~片手だけじゃ音は鳴らない~」



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by y_natsume1 | 2008-04-06 22:08 | シンガポール

アートの連鎖

ゲイ・ボーイと、ソフォクレスのギリシャ悲劇オイデプス王を題材に、
松本監督は映画 「薔薇の葬列」 を撮る。

ピーターのデビュー作&カルト作にして出色の出来栄え。



ロンドンで上映された「薔薇の葬列」を観たキューブリックは、それを参考材料に 「時計じかけのオレンジ」 を撮る。

主人公アレックスの化粧具合や、仲間数人で練り歩くシーンなどは、
「薔薇の葬列」 を彷彿とさせる。


「時計じかけのオレンジ」で、アレックスを演じるマルコム・マクダウェルは
「雨に唄えば」 を歌う。

マクダウェル自身が空で歌える曲が
それしかなかったからだそうだ。

かえって、不気味で効果的。



曲といえば、
これらの映画とほぼ同じ時代に、
ジム・モリソンはオイデプス王をモチーフに
「ジ・エンド」 を書いた。

世界は、実は既に終焉を迎えているのだろうか。

「ジ・エンド」は今も「終わり」を告げることなく、
繰り返し僕の部屋でかかっているというのに。



村上春樹の 「海辺のカフカ」 は、
明らかにオイデプス王を意識したストーリー展開だ。

「海辺のカフカ」では、
プリンスの「セクシーMF」もBGMとして描写されている。



そして・・・・・・・。

「海辺のカフカ」の舞台になった四国・香川県の海辺の、
何本もの松の木が生い茂る砂浜。

その辺りは、僕の故郷であり、
僕にとっての 「亜空間の果て」 でもある。


深夜そこで もしも、もしも、満月が輝いていたら、
ほんのわずかな可能性だけど、
僕はオパールを探し当てることができるかもしれないと思う。

形そのものが存在せず、物理的には触れることなどできない、
けれど永遠なるオパールを。

それは、 

願い、  に近い。

赤い月なら、なおさらだ。

僕自身がルナティックで狂ってしまえばいいからだ。

オパールを、慈しみ、愛撫し、狂っているそのとき、

「ジ・エンド」は文字通り、リアルに終わりを告げ、

流れている音楽はやがて
「月光のドライブ」 に変わるだろう――。

そう、 そうだ、 もうすぐ、
真の終わりが、やってくるのだ、

今も 「亜空間の果て」 の口を大きく開けて待っている 

故郷の海辺の街で――。


♪ テーマ曲 「The End」 by The Doors ♪
♪ テーマ曲 「Moonlight Drive」 by The Doors ♪
♪ テーマ曲 「Sexy MF」 by Prince ♪


関連記事:
「『海辺のカフカ』についての雑文」
「『海辺のカフカ』についての雑文 (その2) ~死者の弔い方~」
「亜空間の果て (3) ~九つの満月~」
「魔性の都市で杯を (4)」
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by y_natsume1 | 2008-04-02 19:44 | Moon