ある夜、近所のワインバーで飲んでいたときのお話。
もうそろそろ帰ろうかなと思っていたところ、ある二枚目の中年男性が入ってきた。
カウンターの僕の席の、一つあけて右隣に座る。
彼はおもむろにシャンパンのゴッセGossetをボトルで注文。
そばにいた僕たち他の客にも、マスターにも、よろしかったらと断った上で、1杯ずつご馳走してくれた。
ボトルはすぐに空になる。
「いやあ、こういうシャンパンはさ、さっと皆で分け合って飲んだ方が楽しいし。一人でやるよりね。」
何分かたって、彼がボソッと言った・・・。
「少しの量を、こうやって時間をかけて楽しむ贅沢さ、っていうのかなぁ。ほら、これ、まだ泡が立ってる・・・」
大人の男の、良いセリフ。
そのあとシャンパンの飲み方について、お互いに少し話をした。
クリュッグ、ヴーヴクリコ、ドンペリニヨン、料理はどんなのが良いか・・・・。
イヤミがなくて礼儀正しい人だった。
普段は酒場でオヤジに話しかけられても否定的な僕なのですが、今回はちょっと違ったかな(・・・だって、オヤジって大抵は愚痴やカラミが多いからねぇ・・・、避けたいのです。それにせっかくの僕一人の時間だし。でも、そもそも僕自身が40歳近いオヤジだから偉そうには言えないよね、とほほ)。まぁ、僕は酒場で一人でいると、なぜかオヤジに話しかけられることが多いのも事実ですけど、決して「あっち方面」の雰囲気はないと思いますよ(苦笑)。
ともあれ、飲み屋で初対面の客同士で名刺交換するほど野暮なことはしたくない。
もっと親しくなってからなら話は別だけど。
その夜も、僕とその男性は互いに名前も名乗らず、少し会話して、粋に別れたのです。
ああいう二枚目で若々しいオヤジって、女性にもてるんだろうなぁ。
男の僕が憧れてしまったっすよ。久しぶりに良い夜でした。