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京の女に言ふ (2)

2008年2月8日(金) 夜。

Chinese New Yearのお祝いと称して
鎌倉の山の中にある、某居酒屋へ。

この辺りは星がとてもよく見える。
けれど月は見えない。 どうして? 新月だっけ?
(そうだ、2月7日は旧正月の元旦なんだから、当然新月で見えないんだ。)

カウンター席の端っこ。

高知の地酒、南を常温で (南を置いてあるとは珍しい店だ)。

ぶわぶわ(あげと卵を甘く煮たもの)、
タラの芽の天ぷら、
奈良の濁り酒、どぶを燗で。

店主からブラックデビルというタバコを1本頂く。 
甘く、 香ばしい匂い。

テレビ局勤務らしい3人組(男1、女2)の客。
大船、逗子あたりの地元民とのこと。

彼女らは僕にときおり話しかけてくれる。

(男1人で寂しそうとでも思ってくれたのか。僕なりに1人を楽しんではいたが。)

そして僕のタラの芽の天ぷらを見て、美味しそうと言う。
おすそわけする。

お礼にと、カワハギをすすめられる。 
タコの柚子じめも。

うまい。 日本酒に合う。

彼女らは、
1人客は僕以外にもう1人いるのに、
僕の方に興味を持ってくれたのか。

考えすぎだな。
単に席がすぐ隣だっただけのことだろう。

女性は2人ともとても魅力的だ。
もちろん性的な意味で。

(あとで2人とも年齢が40代だと聞いて驚く。 1人は20代、もう1人は30代かと本気で思ってた。 居酒屋の照明のほの暗さはこういうことも引き起こす。)

男性の方はこの居酒屋に10年ぐらい通っているという礼儀正しい40歳。

4人でテーブル席に移動してまで飲んでしまう。

いかんなぁ、このノリの良さ。
ひとしきり盛り上がる(たぶん)。

店内ではアン・サリーのジャズが流れている。


・・・・・・ 気がついたら、

居酒屋を出て
僕は1人鎌倉の暗い山の中を さまよい歩いている。

ものすごく、寒い。

旧暦の新年を祝うには、少々ヤボだろうか。
オンナっ気もなく、都心の華やかさもなく。

いや、いいんだ。 これで。
鎌倉で飲んだくれてる方が、僕らしいというもの。

頭にはロードムービーが浮かぶ。

ヴィム・ヴェンダースの「アメリカ、家族のいる風景」
(地味だし、最低の日本語タイトルだが、内容は本当に最高だ)。

「EUREKA」(日本では珍しいロードムービーの秀作)
「パリ、テキサス」
「ダウン・バイ・ロー」
「バッファロー’66」 ・・・・・・。

これらに共通するのは、実はロードムービーという形式だけじゃなくて、
「荒涼とした」風景そのものなのだ。

ジャック・ケルアックは「荒涼天使たち」で的確にその本質を突いている。



・・・・・・ たぶん1時間以上も歩いたろうか。

たどり着いた先は、

なぜかよく行く由比ヶ浜の「お酒の神様」という名のバー。
体が覚えていたのか。

真っ暗で、目の前にあるはずの海は見えないが 
波の音は聴こえる。

午前5時?

マスターにレゲエのCDのお礼を言う。

ペルノーのソーダ割り。

まだ飲むのか? そうさ、だって、バーだもん。


無意識に(意識的に無意識に)ロートレックの画集を出す。

(いや、現実には出していないのかもしれないが、
頭の中ではロートレックが回っていたのだ。)

前夜、六本木の展覧会に行ってきたばかりだったから
鞄に入っていたのだろう。


ロートレックは素晴らしい。

展覧会でのロートレックの略歴では
梅毒とアルコール中毒に悩まされ・・・・ とある。

そうに違いはないのだろうが、
アル中はどうだか。
そりゃアブサンの飲みすぎには違いないだろうけど。

単なるアル中っていうより、薬物作用だろ。

ニガヨモギの成分が、脳に悪い影響を与えるのか。

19世紀末から20世紀初頭のパリの芸術家たちは
皆、揃いも揃ってこの酒に狂っていた。

詩人ランボーしかり、画家ゴッホしかり、ピカソしかり、ドガしかり。

やがて禁止になったアブサンの代用品として
ペルノーが好まれるようになる。

僕は狂ってしまいたくて、いつもペルノーを飲むのか?

だったら素直に(このバーにある)再発アブサンを飲めばいいのに。

ペルノーが好きなのだ。
ペルノーを飲むヘンリー・ミラーも好きなのだ。



ジャズを聴こう。
ジャズはどこだ。

チャーリー・パーカーの、うるさいほどのアルト・サックスがいい。

1940年代のパーカーは
2008年の鎌倉をも征服できる。


ゴロワーズを吸いながら、

夜が明ければ、この日は特別な日になるのだと、思う。
「あの人」の、72回目の、特別な日。

そして僕は鎌倉なら、さまよい歩いてもいいと思ってしまう。
ゴロワーズとペルノーさえあればね。


僕は由比ヶ浜の海を見ないまま、
いや、すぐ目の前にあるのだけど、
泥酔した僕は視覚的に認識できないまま、
朝のバーを出る。

普通、朝まで飲んでるような不良なら
近くに”オンナ”でもいて、
その家に寄るのだろうけれど、
僕にそんな女性はいない。

(逆かな。 親しい女性がいれば朝までなんか飲みはしないだろう。)

・・・・・ 腹が、減った。

ねぇ、オネエさん、僕に何か食わしてくれよ。
オパールとジャズとゴロワーズとペルノーを忘れさせるほどの、
食い物をさ。


ねぇ、オネエさん。


僕は1963年の、あの女性に向かって、
携帯電話をかけようとしていた。

今はもう、この世(夜)に存在しない、あの女性に向かって。


♪ テーマ曲 「星影の小径」 by アン・サリー♪
     アルバム「ムーンダンス」より

関連記事:
「京の女に言ふ」
「ゆる~いレゲエを鎌倉で」
「由比ヶ浜に 酒の神 在り」
「Blue Train」

a happy new rat year to ya!
by y_natsume1 | 2008-02-09 18:36 | 鎌倉湘南Seaside
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夏目芳雄の東南アジア・映画・ジャズ・酒などに関するよもやま話です。
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