遅ればせながら映画
「UDON」(2006)を観た。
香川(讃岐)が舞台の、さぬきうどんを巡る物語。
最初は気乗りしなかったけど、
僕の出身地香川県が舞台だし、僕は根っからのうどん好きなので、
やっぱり観てみようかと思って。
地元香川県出身の俳優、タレントなども何人かゲスト出演している。
南原清隆、高畑淳子など。
特に、脇役の1人である要潤は地元出身なだけに
セリフの言い回しも自然で好感。
香川県でそば屋を見かけることは滅多にない。
それに引き換え、うどん屋はあちこちにある。
もしかしたら喫茶店なんかより数が多いかも、と思ったこともある。
そもそも香川県の大抵の喫茶店には、
メニューにうどんがあるところが多い。
「踊る大捜査線」の製作・監督のコンビは
こんな作品も撮るのかと思っていたら、
監督の本広さんは香川出身だと後で分かり、合点がいく。
映画は、ドキュメンタリーと寓話を行ったり来たりしている感じ。
それほどの大傑作とまでは思わないけれど、
制作陣のさぬきうどんに対する思い入れは確かに伝わってくる。
そして、この作品の本当のテーマはさぬきうどんではなく、
むしろ父と息子の関係性なのだろう。
映画の中で、宇高連絡船(注)のうどんのエピソードが、語られる。
本当に驚いた。
僕たち以外にも、
宇高連絡船のうどんにノスタルジックな思いを抱いている人がいたとは。
・・・・・・ 僕が高校生、いや大学生の頃だったか、
今は亡き実母に言ったことがある。
「うどんでホンマにうまいんは、高松駅ん中の0番線と1番線のちょっと先にある立ち食いうどん屋と、(宇高)連絡船の船ん中にあるうどん屋やな」
と。
「あんた、よう分かってんな。 そや、そこは美味しいけんのぅ。 高松駅ん中のうどん屋はな、最近経営者が変わってから味が落ちた言う人もおるんやけどな、ほんでもまぁ、今でも美味しいほうなんやろな」
そしてもう1軒、実家の近く、電電公社(現NTT)の裏にある小さなうどん屋もいい。
地元香川には他にも美味しいうどん屋が数多くあるのだろうけれど、
僕にとってはその3店が最高だ。
僕が大学生の頃、東京から香川に帰省するたびに
宇高連絡船に乗り、そこで時々うどんを食べた。
連絡船で食べないときは、高松駅構内の立ち食いうどん屋で食べる。
そのどちらか。
連絡船のうどんは何の変哲もない、ただの素うどんだけど、
とても美味しかった。
やがて1988年に瀬戸大橋ができ、宇高連絡船は廃止される。
あの船の中のうどん屋は、もう、存在しない。
(注)
岡山県の宇野と香川県の高松を結ぶ連絡船。
僕が東京から帰省する際は、
岡山まで新幹線、
岡山から宇野まで在来線、
宇野から連絡船に乗って高松、
高松から更に在来線に乗って実家へというルートだった。
飛行機は金のない貧乏学生には高価だったし、
何より空港から実家までの足がない。
路線バスも限られている。
地方は昔も今も、車社会だ。
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高松駅構内の立ち食いうどん屋は今はどうなっているのか。
もしかしたら、もう存在していないのかもしれない。
数年前、旧高松駅そのものが再開発で取り壊され、
少し離れた場所にずらして全く違うデザインで再建されたからだ。
新高松駅の中に、あのうどん屋はあるのだろうか。
今は帰省するには新幹線でなく、飛行機とレンタカーを使うから、
高松駅の中がどうなっているかいまだに知らない。
高校生の頃よく授業をサボって食べに行っていた、実家の近所の、
電電公社(現NTT)裏の、とてつもなく狭くて小汚いうどん屋は
今ではきれいに改装され、
昨今のさぬきうどんブームで結構繁盛している。
昨年(2006年)、実母の墓参りと実父宅を訪ねる目的で帰省した折、
自分の子供たちをその店に連れて行って食べた。
美味しさは変わっていない。
そして最近、また新たに美味しい店を見つけた。
高松空港からレンタカーで実父の家に向かう途中にある某うどん屋。
麺にコシがあってとても美味しい。
家族で香川に行く(「帰る」とは言えない)時は必ず寄るようになった。
・・・・・・ もう一つ、別のエピソードを。
同じ高校の同級生だった僕の父と母が、
高校を卒業してから何年かして偶然再会したのは、
実は宇高連絡船の上だったのだそうだ。
昨年、父から直接聞いた。
それがきっかけで2人は付き合うようになり、結婚して僕が生まれる。
その3年後2人は離婚し、
僕は母に育てられるので父とは以来一緒に暮らしたことがない。
・・・・・ 宇高連絡船も、船の中のうどん屋も、そして僕の母親も、
もう、この世には存在しないのだけれど、
この映画を観てそういうことも思い出す。
久しぶりにまた讃岐うどんを食べたくなった。
♪ テーマ曲
「青空」 by ブルーハーツ♪
関連記事:
「思い立ったら うどんを食べに」
「連絡線のさぬきうどん」
「四国の夜が更けてゆく」
「春の瀬戸内 (1) ~叶え橋~」
「夏の瀬戸内 (3)」
「母の日に 想いをはせる 3人の女性(ヒト)」
「Blue Train」
さぬきうどん関連サイト:
「讃岐うどん 【UDON】情報ランキング」
「エンジョイさぬきうどん!」
「はじめてのさぬきうどん」
「さぬきうどん百点満点」
<追記 2007年11月18日>
2007年11月16日(金)の朝日新聞夕刊の1面に、宇高連絡船のうどんの記事が出ている。自分以外にも、大勢の人々が、今はもうなくなってしまった連絡船のうどん屋に郷愁を抱いていることがわかる。 その記事が出ていることをタイムリーに教えてくれた人に、僕はとても、とても感謝している。 僕の家では朝日新聞をとっていないから。 本当にありがとう。