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映画 「初恋」 (2006) 宮崎あおい主演

僕にはよくあることなのだが、
観る前はバカにしていたのに(観る前に決めつけんなよ、自分)、
観た後は、結構気に入ってしまう映画、というパターン。

「初恋」 (2006) もそうだ。

この映画について、
世間一般には否定的な感想がいくつかあるのは承知している。

仲間どうしがどういう関係か分かりにくい、とか、
あり得ない荒唐無稽な設定でしょ、とか、
3億円強奪の実行に移るまでが冗長だ、とか。

確かにそう観ようと思えばそうなんだろう。
しかし、それはヘンに期待し過ぎたがゆえの
反動というものではないだろうか。

昨今の、
浅はかで分かりやす過ぎるTVドラマの設定や脚本に慣れてしまうと、
こういう映画のいくつかの良さを
見過ごしてしまうことにならないだろうか。

全体としては、
僕自身はこの映画をとても気に入ったし、
なかなかの出来栄えとして推す。

1960年代後半という時代を今描くのは、
実は観るのと作るのとでは大違いなぐらい、
とてもとても難しいからだ。

セットも当時の車の調達も、街並みの再現とかも。
現代劇と同じようにはいかないし、
時代劇のような割り切りと既存のセット使用もできない。
1960年代後半を描くってことは、そういうんじゃないから。

だから、
よくぞここまで作ったと、賞賛したい。


ポイントはやはり、
メインイベントであり、勝負どころである、
女子高生が3億円を強奪するという設定。
それにできるだけリアリティを持たせること。

それを補ったのが、演出や脚本、そして宮崎あおいの存在感ある演技だ。
 
強奪までの過程を丁寧に丁寧に描くことで、
ある程度説得力を持たせることに成功しているとは思う。


この作品全編を貫いているのは、一種の 「緊張感」 だ。
それは犯罪映画やサスペンス映画にありがちな意味での、
いわゆるハラハラドキドキの緊張感とは少し違うように思う。

それは、1960年代後半という時代性と、
若者の、張り詰めたような 「生」 や 「反体制思想」 や 
「見えざる生きる目的」 ではないだろうか。

混沌とした中での、「何か」に対する渇望に近い感覚。

そして、「切なさ」 という、
派手さはないが、激しさをも内に秘めた感情。


3億円強奪がこの映画の山場ではあっても、
それだけのために、
映画は最初から緊張感をかもし出しているのではない。

3億円強奪でさえ、この映画の通過点、材料に過ぎない。

あくまで描くのは、
ヒリヒリするほどの、初恋、だからだ。

最近は何でもすぐにお金に換算したがる風潮があるが、
そんなものは描こうとする物語の材料にしか過ぎないのだ。 

映画の観客はそこを浅はかに見誤ってはいけない。

恋や、人生の中での濃密な瞬間は、
3億円あろうが10億円あろうが、買えやしないのだから。


原作を読んでいないので原作については言う資格はないのだけど、
脚本はすごいなと思う。

原作の良さをおそらく一生懸命生かしたと思われる脚本。
頑張っている。
脚本は映画の命であり、この作品でもそれが伺える。


塙監督の丁寧で細かな演出と、
1960年代後半の新宿の風俗をうまく伝えるセット、
これらは両方とも見事であり、秀逸である。

当時の、
新宿の盛り場や学生運動やジャズ喫茶、
車、バイク、
緑のコートや黒い革ジャン、ブーツ、
ミニスカートなどの衣装。

それら風俗を上手に、しかも大切に扱っているのが分かる。

特に学生運動とデモ。 機動隊との衝突。

ジャズ喫茶Bで流れるジャズも、
コルトレーン(あるいはアルバート・アイラー系?)だし、
映画の中の会話でもアート・ブレイキーの名前が出てくるし、
時代を表現する重要なファクターであるジャズの内容が、
この当時の時代設定から外れていないのは好感だ。

僕は団塊の世代じゃないけれど、
1960年代後半が大好きな僕には、
最初からこの映画を気に入る素地があるのは確かだな。



そしてネタバレにならない範囲で言うのだが、
小道具の使い方は本当に素晴らしい。

タバコ(ハイライト)、
詩集、
腕時計、
鉛筆削り・・・・。

全て意味がある使われ方。
映画では2度以上、これらが出てくる。
注意して観て頂きたい。

2度目、あるいは3度目以降にこれらが画面に登場する時、
何を語ろうとしているのか、
何を表現しようとしているのか、だ。


宮崎あおいが赤いバイクで練習し、疾走するシーンは、
たった数秒だけど、
この映画の中で最も輝いているカットだ。


実は、宮崎あおいという女優を、僕はあまり好きではない。
好みではない。
顔つきも、セリフのしゃべり方も。

しかし、認めざるを得ない。

16歳の少女のあどけなさ、
17歳のふてぶてしさ、
18歳の大人の萌芽。

よくぞ演じている。

バイクの運転も含めて、
その存在感と表現力を、認めざるを得ない。
映画をなんとか成功に導く力を持った俳優だと思う。


最後に、

小出恵介演じる東大生の名前、「岸」という設定は、
けっこう好きだな(笑)。

これも意味のある使われ方。

僕はこの作品、とても気に入っている。

映画 「初恋」 の公式サイトはこちら
by y_natsume1 | 2007-09-06 08:22 | 過去の映画評「は」
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夏目芳雄の東南アジア・映画・ジャズ・酒などに関するよもやま話です。
by y_natsume1
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