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ジャスミンと巫女

2008年5月初旬の深夜、某酒場に入っていく。

隅の席で見知らぬ恋人たちが濃厚なキスを交わしている。

その傍ら、
カウンター席で飲んでいたミュージシャンとTVマンとI氏たちと、
やって来たばかりの僕は、
数ヶ月ぶりに再会する。

既にカウンター席はいっぱいだ。

僕は中央の台のところに「特別席」を作ってもらい、
1人、立ち飲み。


僕が1人で飲んでた中央の台のところに
ミュージシャンやTVマンがなぜか自然と集まり始め、
僕と一緒に立ち飲み。

マスターも時々参加する。

ミュージシャンはもうすぐ新しいCDアルバムを出す予定だ。
嬉しい。

隅のカップルの熱いキスを ちらちらと楽しみながら 見て見ぬフリをしながら、

音楽と京都と恋人達の熱いキスの方法と詩と九条と巫女の存在とが
僕たちによって代わる代わる語られる。

なんて楽しい夜なんだろう。

ボクハ コノヨル 10スウハイ イジョウ ノ ペルノー ノ ソーダワリ ヲ タイラゲタ

****************

気がついたら 僕はいつのまにか別の空間にいる

夜のカレーライスが
首都高の擬似ムーランルージュに激突し
28種類の色彩を必死で犯している

いや 犯している幻想を抱いている

あの「巫女」が
映画でアンディ・ウォーホールを演じた俳優 
(それはデビッド・ボウイでもガイ・ピアースでもいい  それは問題ではない) 
に乗り移り

僕たちに告げる

5番目の砂漠へ向かえと

音楽の舌と僕の舌がねっとりと絡み合い  
吸い合っているうちに

間抜けなことに

ボブ・ディランの豊満な胸は とうとうはちきれて
5番目の砂漠にミルク色の涙を落としまくる

砂漠を目指して僕たちは動く

巫女のお告げによって青山経由で(逆方向だろうに)
三宿の黄色い酒場に場面が変わる

巫女の姿はここにないが 
ここでも僕を守っていることに変わりはない
ジャスミンの匂いでそれが わかる

黄色い酒場で僕の大好きなイエローセンターラインが流れ
そのすぐ後に人間の証明のテーマ曲がかかる
その曲は黄色い酒場で必ず最後にかかる 閉店の合図だ

ありがとう  マスター

楽しくて幸せな酒だった 

僕はディランの涙という名の雨が落ちまくる午前10時の街に出て
この世とあの世のはざまの 微妙なグレイゾーンを漂いながら
オパールを探し始める

僕は どこで射精すればいいのだろう


ヘンリー・ミラーが書いているように
僕たち人間には時間よりも空間が必要なのだろうか

だとすれば それは どこだ?

そもそもオパールにもディランの涙にも首都高の擬似ムーランルージュにも
何の意味もないのだ

いや すべての名称には

何の意味もない
何の意図もない
何の根拠も ありはしない

意味を求めてはいけない
答を追いかけてはいけない
応えを期待すべきではない

人は皆 求めすぎなのだ
意味などないのに

ただの 記号だ
何かと何かを相対的に区別するためだけの

相対的な区別の点では多少の意味はあるが
それだけだ

そして ただ 存在するだけだ

切ないほどに


僕が問うているのは 意味や意図ではなく
存在そのものなのだ

ここでは存在そのものが 問題なのだ
本当に この世に 存在しているのかどうかが 今 重要なのだ


二つの睾丸の間でペニスを硬く勃起させながら
僕はこれでもかというほど何度も
月子さん(仮名)とワルツを踊っている幻覚を観る

(今夜の「月子さん」はいったい誰のことを指すのだろう? それが誰であろうと本質的な問題ではないのに そんなふうに人は僕に尋ねようとするのだ  愚かなことだ )

このとき 幻覚(あの世)の中でも
僕の勃起したペニスはしっかりと存在していた ハズだ


けれど現実(この世)においては 僕の目の前で
ディランの涙に濡れた街が
美しい墨絵そのものとなり
とっくに僕を狂気に導いているところだ

午前10時の雨に濡れた新緑は 
鮮やかなモノトーンの墨絵に同一化する

香を焚こう
清めよう この 空間を

京の街で買い求めた  「墨香」という香を焚こう

そしてその香りの中で西東三鬼や金子光晴のような
色っぽくて味のある無頼な文章を高らかに朗読しよう
言葉そのものの意味ではなく 彼らの存在を感じるために

夜が明けたというのにあの月は まだ見えない
僕が見たいのは 夜の月じゃなくて
昼間の赤い満月だ

いったい いつになったら あの月を見ることができるのだろう

ねぇ、オパール、
そこに、 いるんだろ?

    いつか いつの日かきっと 僕と ワルツを 踊ろう  

♪ テーマ曲 「waltz #2 (XO)」 by Elliott Smith ♪
♪ テーマ曲 「bottle up and explode !」 by Elliott Smith ♪
♪ テーマ曲 「miss misery (early version)」 by Elliott Smith ♪

関連記事:
「月子さんのお話 (4) ~遊郭の夕べ~」
「京方人(みやこかたびと)」
「三線の調べに酔っておるのだ」
「亜空間の果て」
「亜空間の果て (3) ~九つの満月~」
「無頼の短編小説 「神戸」 by 西東三鬼」
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# by y_natsume1 | 2014-01-19 18:04 | Moon

亜空間の果て (3) ~九つの満月~

2007年8月某日 三宿。 暮れ六つ~夜遅くにかけて。 

某ビルのX階、”亜空間”の青い扉を開けて入っていく。

客は僕1人だ。

夜の帳が下りる直前の夕暮れは、茜色が一番鮮やかになる。

僕はアブサンの代用品、ペルノーのソーダ割りをやりながら、
こんな不らちな飲み物は、
確かヘンリー・ミラーの「北回帰線」にも描写されていたと思うが、
とんでもなく危うい、けれど同時に最も好ましい酒だと信じている。

( 「北回帰線」の主人公、つまりヘンリー・ミラー自身は大抵ぺルノーで飲んだくれている。)


僕は何本もゴロワーズを吸いながら、
窓に映る九つの擬似満月を眺める。


ヘリコプターの音が(だって本当にヘリが飛んでいたんだ)
マイルズ・デイビスのミュート・トランペットにかぶさり、
救いようのない地獄への入口を開けて、待っている。


第2幕が始まるかのように、しっかりと夜の帳が下りる。


13小節目の赤い月はいったいどこだろう。
ここには九つもの満月が、バーチャルではあるにせよ、
存在しているというのに。

存在なんて、 そもそも幻想なのだろうか。

色即是空、空即是色。
人の世、 浮世、 あの世のリアル。
この世のバーチャル、 あっちのXXX。


突然、
階下のR246では救急車のサイレンが高らかに鳴り響き、
窓から吹き込む真夏の生ぬるい風と一緒に、
亜空間のクールなBGMを台無しにする。

これじゃ3度・5度の和音じゃなく、
なんだか2度同士のサウンドだ。
モンクのピアノは2度の音でもカッコいいが、
サイレンはそうはいかない。


墨のような、良い匂いをさせているあのオンナは、
いつも、気づかないだけだ。
自分の、性的魅力に。

違う。

ちゃんと分かっているくせに、
自分では気づかない フリをしているのだ。
悪魔のように。
僕に対してだけは。



ボサノバも、  ジャズもワインも、  ロックもカネも、
全ての物事はないまぜとなって、
青いカフェの扉と、妖しいロウソクの灯がともるテーブルに、
黄金の血をあびせている。


何杯目かのペルノーのソーダ割りを頼んだ頃、
ムーアの写真集「インサイド・ハバナ」と
エゴン・シーレの画集が、
真空管を割って僕自身の内部に入ってくる。

―― まるであのオンナが柔らかなその舌を、
僕の口の中に官能的に入れたり出したりするようなリズムで ――。

―― まるで僕の股間のこわばりが、
発射できずに行き場を失っているかのように ――。

     もちろんその時僕の両手は縛られ、自由を奪われたままだ。


ハバナ、エゴン・シーレ、タバコ、酒、止まった時間。


もともと、僕はルナティックなのだろうか。
特に赤い月に対しては。

ケルアックもシド・バレットもランボーも、
みんな、 何かに狂っていたのだろうか。
そうに違いない。
そう思いたい。


月に向かって僕自身を発射したいとほざいた夜は、
確かハバナへの一人旅の頃だったかもしれない。
いや、もう少し前だったかも。
どっちにせよ、そう昔じゃなかったはずだ。

僕は
僕自身を
発射しよう。

僕自身の命を。

オイディプス王に向かって。

39年前の未来に向かって。
九つの擬似満月に向かって。
西から昇る太陽に向かって。


スタイルカウンシルの
「The Whole Point of No Return」は
階級制度に唾を吐きながら、
クールにこのカフェで鳴り響き、
僕を、戻ることなど決してない非日常の、至福のポイントへと導く。

いつのまにか
僕はこの亜空間から、
至福のポイント、1984年5月の富浦海岸に、
鈴木康博のLPレコード「Sincerely」を抱えてトリップしている。

1984年5月の僕にとって、
富浦の海と鈴木康博の曲は特別な存在だ。

朱と緑で彩られたステキな京の都も、
カフェ・ブリュにかぶれたこの亜空間も、
原色のハバナも、

1984年5月の富浦とは絶対的に違っている。

もう、二度と、どこにも戻れないのだろうか、
気が狂った酔いどれボヘミアンは。


とにかく
見えない月を、 称えよう。 ボブ・ディランの意味深な歌と共に。

絡み合い、互いの唾液を吸い合う2つの舌。一方が僕の舌だとしたら、もう一方のそれは、いったい誰のだろう。

窓に映る九つの擬似満月を、 慈しもう。 それらは既に僕にとってはリアルそのものだから。

オパールとサファイア(40年近く前のTVドラマ)が頭の中に来訪する。 オパールはどこだ。

Cメジャー7thとFメジャー7thのコードが12弦ギターで交互に弾かれる。
そのコード進行は知らせている・・・・ 暦の上ではもうすぐ新月だと。

バレッタに15種類の色彩とこの世で最高の性的興奮を。

新月なら、 いずれにせよ、 月は、 見えないのだけれど。

どうしてオパールを捜し続けるの?

そんなこと、 知るか。 
わからない。
わかりたくない。

ただ、狂ったように、 酔っている。

そうだ、
チャーリー・パーカーの、セルマーのアルトを探そう。
セルマーのアルトはどこだ?
あれこそ、赤い月なのに!

・・・・・ 風が急に止んだとき、
       真夏の夜の鼓動も同時にピタリと止まり、
          オンナの声色で不気味なマンダリンのささやきが聞こえてくるのだ。

         「ねぇ、 忘了?」

****************************

♪ テーマ曲 「Round About Midnight」 by Miles Davis ♪
♪ テーマ曲 「The Whole Point of No Return」 by The Style Council ♪
♪ テーマ曲 「瑠璃色の夜明け」 by 鈴木康博 ♪
♪ テーマ曲 「見張塔からずっと」 by Bob Dylan ♪

関連記事:
「亜空間の果て」
「亜空間の果て (2) ~赤い月の夜~」
「キューバへの一人旅(9) ~時空を越える大砲の音~」
「おぼろ月さん 連れてって 神の国に 銀河の彼方に」
「葉山のカフェ・レストラン (1) ~「北回帰線」の空間へ~」
「ゆるゆると シンガプラ (8)最終回 ~南回帰線はまだか?~」
「ジキル博士とハイド氏」
「忘了?」

追記: 
また酔っ払って書いてしまったようである。 自分でも知らないうちに。
酔っ払っていると(というか酩酊状態なのだが)、筆がすべる、すべる。
しかも異様に長い、散文詩まがいのような文章。  
朝PCを見てみたら、何だか不思議な文章が「下書き」として残ってた。
数日たってから、ほとんどの内容はそのままに、明らかな誤字や意味不明すぎる部分だけはちょっと手直しして、この記事としてUPしてみた。
以上。

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# by y_natsume1 | 2013-12-07 16:49 | Moon

京の女に言ふ (2) 改訂版

2008年2月8日(金) 夜。

Chinese New Yearのお祝いと称して
鎌倉の山の中にある、某居酒屋へ。

この辺りは星がとてもよく見える。
けれど月は見えない。 どうして? 新月だっけ?
(そうだ、2月7日は旧正月の元旦なんだから、当然新月で見えないんだ。)

カウンター席の端っこ。

高知の地酒、南を常温で (南を置いてあるとは珍しい店だ)。

ぶわぶわ(あげと卵を甘く煮たもの)、
タラの芽の天ぷら、
奈良の濁り酒、どぶを燗で。

店主からブラックデビルというタバコを1本頂く。 
甘く、 香ばしい匂い。

テレビ局勤務らしい3人組(男1、女2)の客。
大船、逗子あたりの地元民とのこと。


彼女らは僕にときおり話しかけてくれる。

(男1人で寂しそうとでも思ってくれたのか。僕なりに1人を楽しんではいたが。)

そして僕のタラの芽の天ぷらを見て、美味しそうと言う。
おすそわけする。

お礼にと、カワハギをすすめられる。 
タコの柚子じめも。

うまい。 日本酒に合う。

彼女らは、
1人客は僕以外にもう1人いるのに、
僕の方に興味を持ってくれたのか。

考えすぎだな。
単に席がすぐ隣だっただけのことだろう。

女性は2人ともとても魅力的だ。
もちろん性的な意味で。

(あとで2人とも年齢が40代だと聞いて驚く。 1人は20代、もう1人は30代かと本気で思ってた。 居酒屋の照明のほの暗さはこういうことも引き起こす。)

男性の方はこの居酒屋に10年ぐらい通っているという礼儀正しい40歳。

4人でテーブル席に移動してまで飲んでしまう。

いかんなぁ、このノリの良さ。
ひとしきり盛り上がる(たぶん)。

店内ではアン・サリーのジャズが流れている。


・・・・・・ 気がついたら、

居酒屋を出て
僕は1人鎌倉の暗い山の中を さまよい歩いている。

ものすごく、寒い。

旧暦の新年を祝うには、少々ヤボだろうか。
オンナっ気もなく、都心の華やかさもなく。

いや、いいんだ。 これで。
鎌倉で飲んだくれてる方が、僕らしいというもの。

頭にはロードムービーが浮かぶ。

ヴィム・ヴェンダースの「アメリカ、家族のいる風景」
(地味だし、最低の日本語タイトルだが、内容は本当に最高だ)。

「EUREKA」(日本では珍しいロードムービーの秀作)
「パリ、テキサス」
「ダウン・バイ・ロー」
「バッファロー’66」 ・・・・・・。

これらに共通するのは、実はロードムービーという形式だけじゃなくて、
「荒涼とした」風景そのものなのだ。

ジャック・ケルアックは「荒涼天使たち」で的確にその本質を突いている。



・・・・・・ たぶん1時間以上も歩いたろうか。

たどり着いた先は、

なぜかよく行く由比ヶ浜の「お酒の神様」という名のバー。
体が覚えていたのか。

真っ暗で、目の前にあるはずの海は見えないが 
波の音は聴こえる。

午前5時?

マスターにレゲエのCDのお礼を言う。

ペルノーのソーダ割り。

まだ飲むのか? そうさ、だって、バーだもん。


無意識に(意識的に無意識に)ロートレックの画集を出す。

(いや、現実には出していないのかもしれないが、
頭の中ではロートレックが回っていたのだ。)

前夜、六本木の展覧会に行ってきたばかりだったから
鞄に入っていたのだろう。


ロートレックは素晴らしい。

展覧会でのロートレックの略歴では
梅毒とアルコール中毒に悩まされ・・・・ とある。

そうに違いはないのだろうが、
アル中はどうだか。
そりゃアブサンの飲みすぎには違いないだろうけど。

単なるアル中っていうより、薬物作用だろ。

ニガヨモギの成分が、脳に悪い影響を与えるのか。

19世紀末から20世紀初頭のパリの芸術家たちは
皆、揃いも揃ってこの酒に狂っていた。

詩人ランボーしかり、画家ゴッホしかり、ドガしかり。

やがて禁止になったアブサンの代用品として
ペルノーが好まれるようになる。

僕は狂ってしまいたくて、いつもペルノーを飲むのか?

だったら素直に(このバーにある)再発アブサンを飲めばいいのに。

ペルノーが好きなのだ。
ペルノーを飲むヘンリー・ミラーも好きなのだ。



ジャズを聴こう。
ジャズはどこだ。

チャーリー・パーカーの、うるさいほどのアルト・サックスがいい。

1940年代のパーカーは
2008年の鎌倉をも征服できる。


ゴロワーズを吸いながら、

夜が明ければ、この日は特別な日になるのだと、思う。
「あの人」の、72回目の、特別な日。

そして僕は鎌倉なら、さまよい歩いてもいいと思ってしまう。
ゴロワーズとペルノーさえあればね。


僕は由比ヶ浜の海を見ないまま、
いや、すぐ目の前にあるのだけど、
泥酔した僕は視覚的に認識できないまま、
朝のバーを出る。

普通、朝まで飲んでるような不良なら
近くに”オンナ”でもいて、
その家に寄るのだろうけれど、
僕にそんな女性はいない。

(逆かな。 親しい女性がいれば朝までなんか飲みはしないだろう。)

・・・・・ 腹が、減った。

ねぇ、オネエさん、僕に何か食わしてくれよ。
オパールとジャズとゴロワーズとペルノーを忘れさせるほどの、
食い物をさ。


ねぇ、オネエさん。


僕は1963年の、あの女性に向かって、
携帯電話をかけようとしていた。

今はもう、この世(夜)に存在しない、あの女性に向かって。


♪ テーマ曲 「星影の小径」 by アン・サリー♪
     アルバム「ムーンダンス」より




後日談:


この鎌倉山ん中さまよい事件は、
(フィクションではなく実話なだけに)
今思うと結構やばかったような気がする。

足腰の痛さからすると1時間どころじゃなくて
3~4時間ぐらい歩いてたような気がするし、
タクシーは全然つかまらなかったし、

ものすごい寒さで、
由比ヶ浜のバーにたどり着いた時は、
(僕のいつもの風邪の前兆でもある)喉の痛みがちょっと出てきて、
体もガタガタ震えていたほど。

だって翌日(2月9日土曜)には
関東地方に雪が積もったほどだったんだからね。

一歩間違えれば(文字通り歩く方向が違っていれば)、シャレにならんことに。

そいでもって風邪も引きかけた。 今は大丈夫だけど。

いかんねぇ、酔いどれは。

トム・ウェイツだってチャールズ・ブコウスキーだって、
みんな酔いどれじゃないかと 言ってみても、

お前(夏目)は詩人でもアーティストでもないだろ、普通の会社員だろ、
と言われてその通り。

酩酊状態のくせに翌朝8時半ごろには
電車とバスを乗り継いで都内世田谷の自宅まで帰還できている
というありがたい展開。 

おそらく、居眠りで乗り過ごすこともなく、1時間半ほどで到着した模様。

失くしたものは片方の手袋のみ。
財布の中身も鞄も無事だった。

43歳にもなって自慢できることじゃないけど・・・。

誰かに守られてるんだろうか。

ちなみにタイトルは「きょうの メニュー」と読む。



関連記事:
「鎌倉の後 にっかつロマンポルノ名作集」
「京の女に言ふ」
「ゆる~いレゲエを鎌倉で」
「由比ヶ浜に 酒の神 在り」
「Blue Train」

a happy new rat year to ya!
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# by y_natsume1 | 2013-11-20 21:51 | 鎌倉湘南Seaside

リグレーのチューインガム ♪

リグレーのチューインガムが子供の頃から好きだ。

当時の包装紙のデザインも、色も、噛み具合も、
噛むだけであんまり大きなバブルが膨らまないところも、
「リグレー」という名前の響きも、

みんな僕好みだ。

ロッテのガムも好きだけど、
ノスタルジックな感覚も含めて、
やっぱり リグレーの方が僕は好きだ。

特に、スペアミントのフレーバー。

・・・・・・ 小学生の頃に読んだベーブ・ルースの伝記に、
シカゴのリグレー球場でルースがプレーする描写がある。

子供心に、
この球場名とガムの名前とはたぶん何か関係があるんだろうな、
ぐらいは感じてた。

やがて、それがシカゴ・カブスの本拠地、リグレー・フィールドであり、
チューインガムの会社リグレーの社長が、
当時のカブス球団のオーナーであることを知る。


  昨今の球場命名権の問題はどうもしっくりこない。
  カネさえ動けば、あんなんで本当にいいのか。
  昔からの球場名にこそ、思い入れがあるのに。



・・・・・・ 出張で初めてシカゴを訪れた1997年。

ダウンタウンにあるリグレービルの建築様式に心ときめかせ、

2度目の(つまり最後の)引退をする直前のサンドバーグや、
まだ若手だったサミー・ソーサのプレーを
リグレー・フィールドで楽しんだ。

シカゴのリグレー・フィールドは、
野球少年にとってはボストンのフェンウェイ・パークと並んで、
特別な場所なのだ。

そこでMLBゲームを実際に観ることができただけでも、
感激のひと時だった。


ガムと、シカゴの球場。 

小学生の僕にとっても、30代のビジネスマンの僕にとっても、
40代になった今でも、
それらは
僕の心の中では、しっかりとつながっている。

*******************************

・・・・・・ いつのことだったろう、
たしか、僕が20代前半の頃、
プータロー(無職)になる直前か。

とにかくお金も人脈も学位も地位も何もなくて、
(若いから当たり前だけど)
もがいていた頃のことだ。

今みたいに飲んだくれるお金さえなかった。

当時の僕に本当にあったのは、
ある命題に対する情熱と、健康と、
何枚かのジャズのCDと、
付き合っていたガールフレンドだけ。
おまけに奨学金の借金まであった。

ある冬の夜、
ガールフレンドと2人でゆっくりと歩きながら、
僕はミントのガムを噛み始めた。


キスをする。
理由なんかない。
そういうものだ。

互いの舌を絡ませる。

相手の舌を吸う。
相手の唾液を吸う。


やがて相手の口の中に、僕の噛んでいたガムが入る。

相手は少しの間、そのガムを噛み、
もう一度キスをしたときに、舌の動きに乗じてこちらの口の中に戻す。

互いに無言のまま、
けれど相手の目は全てを分かっているよというシグナルを発しながら、
僕たちはその行為を何度も繰り返す。

ガムを噛んではキスをし、キスをしてはガムが移動する。

まるでリグレー・フィールドでキャッチボールをしているみたいに、
チューインガムは僕と相手の口の中を行ったり来たりする。

ミントのフレーバーが薄くなっても、その行為は
目的地に着くまでずっと続く。

・・・・・・互いの口の中を所在無げに行ったり来たりしていた
あの時のチューインガムは、

僕たちの、
もうどうにもならないこれから先を、

どっちに行ったらいいのかさえ分からなかったどっちつかずの混沌を、

この先とんでもない狂気と破滅と激しい憎悪が待っていることを、

既に明確に、

暗示していたのかもしれない。

♪ テーマ曲 「チューインガムをかみながら」 by ブルーハーツ ♪
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# by y_natsume1 | 2012-12-08 20:04 | Back Street Days

なくしたものを 探しに出れば

右手には懐中電灯を
左手にはワンカップ大関を

そのイデタチで
なくしたものを
探しに出たのだが


あいかわらず何年経っても 
いまだに見つからないものが いくつかある 

なくしてから
ずっと探している

もう  見つからないのかもしれない

それとも 探し求めていれば 
いつかは見つかるものなのか

やはり分からない

けれど そもそも
なくしたものなんか
ホントに
あるんだろうか

真冬に聴こえる
妖しげなサマータイムブルーズのように


♪ テーマ曲 「たしかなこと」 by 小田和正 ♪
そうかな
小田和正 / BMGファンハウス
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# by y_natsume1 | 2012-12-07 16:00 | アジア的独白

赤い靴が僕にキスをしたのかい?

2009年6月26日(金)。

むちゃくちゃキレイな、夕陽。

どうしてもはずせない、夜。

やがて幾人もの人に久しぶりと言われる夜と化す。

飲み続けた僕は、

いつのまにか、

翌朝、そのまま「赤い靴」へ。


この世とは思えないほどのカッコいい酒場で

そこで出会ったキレイな女と語り合い、

それなりに大きな胸を触り、

ホールでダンスをし、

キスをしたような、

気がする。

たぶんただの妄想だろうけど。

昭和30年代の、日活アクション映画かよ。


僕はずっと、

そのマブい(いつの時代の言葉だ、笑)
彼女にくどかれていたらしいのに、

僕は別の空間にいるかのように、

他人事のように

ただ、その声を聞いていただけのような、

そんな気がする。

とても感謝しているくせにね。


それよりも、

赤い靴の男性スタッフの1人を、

僕がきちんと覚えていたこと、

お世話になって感謝していること、

それを言ったら、

そのスタッフがことのほか

嬉しがってくれたこと、

そっちの方が、

僕らしいといえば僕らしいか。

ああいう、体育会系の男の子って、

自分ができないだけに、

いいね。

オンナよりもオトコかよ、今夜も(笑)。

いや、今朝も。

いつも女性にはご縁がない。

自分が拒否してるだけか。

僕はあっちの系じゃないんだけど、

どうしても男の子の頑張りの方になぜか目がいってしまうのだ。

あんないいオンナに口説かれてる最中なのに、ねぇ(笑)。

もったいない。

***************


今、サッカーから帰った王子を相手に、

酔っ払って杜甫の国破れて山河ありを語っていたところ。

君は僕と違ってイケメンだから

キレイな女には気をつけろってことさ。

違うか? なんだか。

そして姫に、

僕が小学生の頃、「ベン」ていうねずみの映画の主題歌を
とても気に入っていたことを、

話した。

歌っていた少年のことはあまり頭になかったけど。

そして、

ライアン・オニールのDVDなら

「ある愛の詩」もあるけど、

「悪女のたわむれ」

の方がいいよ、とまで言ってしまう。

アホか、僕は。

まだ酔っている。


さて、さて、迎え酒をやりながら、

香を、焚こう。


♪ テーマ曲 「Benのテーマ」 by マイケル・ジャクソン ♪
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# by y_natsume1 | 2009-06-27 17:32 | Back Street Days

夏至の夜 ロウソクの灯りが時間を止める

2009年6月21日(日) 夜。

夏至。

この日を境に日の長さが徐々に短くなっていく。

僕にとっては、

何かの変わり目を象徴しているようでもある。


部屋の電灯を消し、真っ暗な中で

大き目のアロマ・キャンドルを灯す。

幻想的だ。

アロマだから当たり前だけど、
お香のような、いい匂い。


いつもの、チリ産の激安But激ウマ赤ワイン。

食パンの耳をトーストしたヤツに
ブルーチーズをたっぷりと塗ってつまみにする。

洗ったばかりのブルーベリーも。

580円でもいっぱしのうまいワインだ。


・・・・・ 呆けたようになる。


ロウソクの灯りは、

柔らかくて、いい。


剛紫の 「空~美しい我の空」 をかける。


CDやDVDをかけると電気を使うことになるから、
本当の意味でのエコロジーにはならないけれど、

こういうの、けっこう好きだ。

ビガク。


東儀さん(?)の笛の音も含めた音全体が、

源氏物語の世界を横目でにらみながら
日本の夏至をゆっくりと駆け抜けていく気がする。

奈良出身の堂本剛くん、今回でなんか突き抜けたな。

しっくりくる。

日本にいてよかったと感じるバラード。

行き着く先は、生か死か。

どちらでもいい。


―― 目を閉じないままで、 

いつのまにか瞑想してたような気がする。


別の世界=異次元に、
少し、トリップしていたような。


今夜はようやく雨が上がって曇りの天候。

星は見えない。

ましてや月は、暦の上ではもうすぐ新月だから、
晴天でも見づらかっただろう。


でも、 やっぱり月を見たい。

ホントは今すぐにでも。


けれど、預言者は僕にささやく。

全てを見透かしたように。

本当の月を見たいなら、由比ヶ浜の(今はもう存在しないあの)バーで、
2009年の9月半ばに決まってるじゃないの、
忘れたの? 


と。

え?

9月?  鎌倉?

ロウソクの幻想的な灯りは、
僕を癒すために時間を止めてくれているというのに、

逆に僕は早く9月になるよう、切望してしまうのだ。

この矛盾。

どうして9月なんだろ?

わからない。

わかっていたとしても、
わかりたくないと言い張るのか。

そういえば、
毎年9月には鎌倉の由比ヶ浜で
キレイな満月をよく眺めたもんだよな。

それと何か関係があるんだろうか。

少なくとも、何かが変わり始めていることは感じる。

今は潮目が変わる時期にいるのだと。


月子さん(仮名)は、
それまで、どこでどうしているのだろう・・・・・・。


空いたグラスにもう一度 赤ワインを 注ぐ。


夏至の夜だからといってもあまり意味はないが、

ベトナム映画 「夏至」

のDVDを消音でモニターにかけてみる。

これほど雨が似合う映画もなかなかないだろう。

どの場面も絵画のように色彩が美しい。

特に緑と青の使い方が素晴らしい。

やっぱり、時間は止まってるように感じる。

なかなか僕は9月にたどり着けそうにない。


僕の時空感覚はとうとう狂ってしまったのか?

いや、そんなことはない。

以前も 今も これからも、
僕の時空感覚はそのままだ。


答は、

答はそこにあると、

もう分かっているはずだろ、自分。

♪ テーマ曲 「空~美しい我の空」 by 剛紫 ♪
♪ テーマ曲 「彼女が死んじゃった。」 by ショーロクラブ Feat.セノオ ♪

関連記事:
「夏至」
「由比ヶ浜の月を 追いかけろ」
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# by y_natsume1 | 2009-06-21 23:30 | アジア的独白

午前6時のハマースミス

2009年6月某日 深夜。

雨の中、六本木の路地裏(バックストリート)を

一人、 とぼとぼと歩く。

交差点あたりの繁華街からだいぶ離れた、
一つ奥まった道。

六本木特有の喧騒とはかなり違う、落ち着いた雰囲気。

あまり、人も見かけない。

既にここは異空間、なのか。


たまたま見つけたブリティッシュパブに入る。

アイリッシュパブの方がよかったんだけど、
ぜいたくは言っていられない。

カウンター席の隅っこ。

ドイツ系の女性スタッフにオーダーを、
CODで。

バスペールエール。

マルボロライト。

タバコがうまいと感じるとは、
ちょいと疲れたか。

知り合いが誰もいない、
初めての酒場って結構好きだ。

馴染みのバーに、行きたくないときだって、ある。


ある有名なバーテンダーの言葉(だっけ? 酔ってて思い出せん)。

―― 初めてのお客さんが店に入ってきて、
そいつが特に挨拶も断りも何もなく、
カウンター席の真ん中に座ったら、
そういうヤツには気をつけろ、
何かしでかすことが多いから、

っていう格言があるんだ。

大抵、どんな酒飲みでも、
初めての場所ではカウンターの隅に座るからね ――



ふうん。

そういえばそうだな。

でも僕はいつも隅っこが好き。

初めての場所では特に。

誰かに屁理屈もこねないし。


ほどよく いや、かなり酔っ払った(狂った)僕は、
今すぐハマースミスに行きたくなってしまう。

明け方の、ハマースミス@ロンドンを、
これから手に入れたい。

クラッシュ、久しぶりに聴いてみるか。

家に帰れば、あのCDはあるんだけど、
まだ帰りたくはない。


雨に濡れたバックストリートは、

見えない月を映す反射鏡のように、中途半端このうえない。

雨と草いきれの混ざったような、いい匂いがして 

たまらない。


♪ テーマ曲 「(White Man) In Hammersmith Palais」 by The Clash ♪
♪ テーマ曲 「I Can't Explain」 by The Who ♪
♪ テーマ曲 「どしゃ降りの雨の中で」 by 和田アキ子 ♪
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# by y_natsume1 | 2009-06-18 20:36 | Back Street Days

いつのまにか雨は上がっていた

2009年6月6日(土) 午後。

雨の中、

鎌倉 由比ヶ浜の某カフェへ。

今回は電車で。

以前この近くにあった「お酒の神様」というバーの元マスターが、

今はこの某カフェの店長さんをやっている。

それがわかって、彼の作るカクテルを飲みに やってきた。

久しぶりに再会。

めでたい。

ファンとしての願いは叶い、現実となった。

海側を背にしてカウンター席に座り、

ジントニック、そして
マスターのいつもの青いオリジナルカクテルを。

約3週間ぶりのアルコールたちが体に入っていく。


ビートルズのサージェントペパーズロンリーハーツクラブバンドが

心地良い音量で
BOSEのスピーカーから流れてくる。


時々横向きになりながら
後ろにある海を見つめる。

鉛色の海、結構好きだったりする。

小降りの雨も、わりと好きだったりする。

イギリスを思い出すからだろうかね。


海の方を見るということは、
開け放たれた入口の方を店内から見るということでもある。

そのシーンは、

まるでホウ・シャオシェン監督の
映画 「百年恋歌」 の
ビリヤード店の出入り口のシーンにそっくりな構図と光の加減だ。

僕の網膜に映っている今この瞬間のこの映像と、
明るさの程度は、なんてステキなんだろう。


お店の隅の席ではメガネをかけた超有名俳優さんが
読書をしている。


僕はふとカウンターの上の方へ視線を向ける。

さりげなく棚の端っこに
ゴロワーズのパッケージが置かれている。

手にとって見る。

昔のデザインのヤツ。

サインがある。

ん?

マスターが教えてくれる。

「あぁ、それムッシュかまやつさんのサインですよ」

この日、僕はゴロワーズではなく、マルボロライトメンソールだった。


お酒はまだまだ続く。

由比ヶ浜という空間では時間の流れるスピード感が、
都内とは全然違うから。

時間を忘れて飲みたくなる空間なのだ。

ペルノー2杯、いや3杯だっけ、そしてビールをジョッキで2杯。


ヘンリー・ミラーの、

人間には時間よりも空間が必要なのだ、
(「北回帰線」のラスト)

というフレーズが説得力を伴って頭に浮かぶ。

*************************

そうだ、

今すぐ はるか彼方の異空間に瞬間移動しよう。

その異空間に居る月子さん(仮名)に
キスをしたい。

お互いの舌を吸いあう、濃厚なキスを。

月子さんは僕の舌と唾液をいとおしく吸い続けてくれることだろう。

そしてそれにも飽き足らず、
月子さんは僕の股間に顔をうずめ、
喉の奥深くまで僕自身をくわえ込むだろう。

僕が果てるまで
快感と興奮の頂点で僕自身の命を発射するまで

その官能の行為はずっと続くことだろう――。

*************************

酔っ払っている。

妄想だ。

いい感じの、酔っ払いの午後だ。

精神の起伏が激しい今の僕には、

女性を性的に妄想することさえ、健全で良い兆しなのだ。

昼間の酒は 心に良い。

*************************

別の妄想がもう一つ続く。

ブラジルだかバリ島だかにいるような光景。

なぜか砂浜で地元の、褐色の肌をした仲間たちと、
酒を飲み、歌い、祈り、踊っている。

ときに僕は褐色の女性とセックスをする。

けれど僕は一人身で生活しているようなのだ。

やがて聖ザビエルのようなヒゲを生やし聖なる衣装をまとった僕は、
ブラジルかどこかの教会で
仲間たちの悩みを真摯に聞いている。

僕の体は まるで Conduit(導管)か半導体のように
彼らの悩みや問題を吸収してあげ、浄化したあと通り抜けさせていく。

僕のさだめは、セックスを大いに肯定する聖職者なのか。

誰かがつぶやく――。

     今は1960年5月なのだ、と――。

*************************

・・・・・ いつのまにかお店の音楽は

        けだるいレゲエに変わっている。

いいな、このレゲエ。

僕はいったいどこを、さ迷っているのだろう。

どの空間を。

時代など関係ない。

僕が生まれる前の、1960年であろうと、
2009年であろうと、
2046年であろうと、
どうでもいい。

どこにいるのか が問題なのだ。

空間だ。

ウォン・カーウァイ監督の3つの映画。

「欲望の翼」 (1960年代の香港、フィリピン)
「花様年華」 (1962年の香港、上海、シンガポール) 
「2046」   (1960年代の香港、2046年を舞台にした小説) 

どの作品も大好きだ。

時間軸も大事だけど、
それよりも空間の視点で思考していたい。

*************************


僕にとっては、
少なくとも鎌倉あたりの空間とは
相性がいいのかもしれない。


マスターはいつも
時間の概念など取っ払った
味わい深い、良い空間を提供してくれる。

それはこの日も変わらない。

マスター、ありがとうございます。


僕のコンディションは一進一退。
心が風邪を引いている感じ。
少しずつ、少しずつ、だな。



―― お店を出たら、もう雨は上がっていた。

R134沿いを 

曇り空と海を見ながら 

ゆっくり  

歩く。

♪ テーマ曲 「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」 by かまやつひろし ♪

関連記事:
「どうしようもないときは雨上がりの鎌倉に行けばいい」
「早朝の鎌倉光明寺 ~キミはショッカーを見たか?~」
「別れのドライブ 由比ヶ浜 そして真冬の風が吹く」
「由比ヶ浜に 酒の神 在り」
「京の女に言ふ (2)」
「映画 百年恋歌」
「映画 「花様年華」(2000) ~チャイナドレスにため息を~」
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# by y_natsume1 | 2009-06-07 11:17 | 鎌倉湘南Seaside

どうしようもないときは雨上がりの鎌倉に行けばいい

2009年5月30日(土) 午後。

いつものように材木座の光明寺を参拝した後、

由比ヶ浜の某カフェに。

窓を開け放った窓際の席。


雨上がりのR134と鉛色のビーチが目の前にある。

海からの、 風も空気も波音も、

今の僕には 「体にいい」。


体つきはスリムなのに胸だけはやたら大きい、
きれいなアルバイトのオネエさんにオーダーを。

車で来ているからノン・アルコールのトニック・ソーダ。

マルボロ・ライト・メンソール。

トニック・ソーダがジン・トニックに思えてくる。

幻覚、どうしようもない精神状態・・・・・

そもそも退廃的に狂いたくて数年前から飲んでいたお酒、

アブサンの代用品、ペルノーの飲みすぎなんだろうか。

それが現実になった?

まさかね。

僕は19世紀のパリの芸術家たちに憧れていただけだったのに。

デカダンス。 タナトス。



―― 僕は雨上がりの雰囲気が好きだ。

特に、曇りや

雨が止んだ直後の海岸に違和感がないのは、

僕の、

16歳@UKブライトン (小石だらけの海岸の街)

の印象が強烈だったからだろうか。

むしろ曇りや小雨ぐらいの方が、

空気の匂いや風の具合や湿気がちょうどいい感じで

ホッとすることがある――。


***************


―― 会社に行く平日は朝食をとらない。

独身1人暮らしの頃からの習慣だ。

けれど土日の休みの朝は、なぜか自然と食欲がわき、

何かを口にする。


僕の「今の」平日の仕事は、

あるスピリチュアルカウンセラーに言わせれば、

まるで毎日牢獄での「おつとめ」(拷問)に赴くがごとくで、

一種の仮死状態なんだ、と。

むしろ仮死状態でいた方がいい、と。

(注: 仮死状態は防御方法の一つらしい。 仮死は生きるという大前提があるからこその、仮の死。 その前提がなければ、仮の死ではなく本当の死になってしまうから。)

食欲もそれほどわかない。

週末の休みだけ、本来の自分に戻る。

村上春樹の小説テーマじゃあるまいし、

まるで「あっちの世界」に行って、

また 「こっちの世界」に戻ってくるみたいに。


・・・・・・・ そうかもしれない。

だとすると、

かなりの時間を、みにくい世界=牢獄 でのおつとめに費やす僕は、

今は週末以外は楽しんで生きていないことになる。


そんなことでいいのか。

いいわけは、ないだろう。


仕事に生きがいを感じ、仕事を楽しんでいる人も、

世の中には大勢いるんだろうが、

今の僕はそうではない。

あのひどい、みにくい世界では、 できない。

そうしたいとも思わない。


「楽しんで生きることは 戦いだ」

と言ったのは村上龍だ (小説「69」あとがき)。

その通りかもしれないけど、

当分、もう戦いなんか、いらない。

充分だ――。


*************


―― 月子さん(仮名)が、

いつの午後だったか明け方だったか深夜だったか忘れたけど、

穏やかな口調で僕につぶやいたような気がする。

牢獄みたいだっていう、その時間帯さぁ、

仮死状態なら成長が止まってるんだろうから、

その分若くいられるんじゃないの(笑)?

いいじゃない、若くいられるんなら。


成長が止まってるんだから、

できないことがあっても

それはそれで当たり前、それもいいじゃないかと

思えばどうなの? ――。


***************

―― 曇り空の由比ヶ浜、 

某カフェの窓際の席で感じる風は

あまり強くなくて、生暖かくもなく冷たくもなく、

とても気持いい。


胃痛でお酒を飲めないぶん、

タバコの本数、ちょっと増えた。

そもそもどちらも体には悪いけど、それはそれでいいのだ。


3時間、都内の自宅で虚無的にDVDを眺めるより、

同じ3時間でも、

高速を飛ばして車で往復2時間、
鎌倉という空間で正味1時間だけでも過ごす方が、

僕の体には、いい。

どうしようもないときは、

どうしようもないなりに、

空間を移動すること。


人間には、時間よりも空間が必要なのだ――。

(ヘンリー・ミラー 「北回帰線」 のラストより)

♪ テーマ曲 「I Will Remember You」 by Solas ♪


***************

<追記>

「仮死状態」 「成長する、しない」 「鎌倉 由比ヶ浜」
というキーワードで頭をよぎるのは・・・・・。

冬が好きなわけではないけれど、

目の前の空間が、
早く 「冬の由比ヶ浜」 になればいいのにと思う。

映画 「男と女」 で、ジャン=ルイ・トランティニヤンが
小さな息子を乗せて赤いオープンカーで
冬のドーヴィルの海岸を飛ばすシーンがある。

以前、それを真似て、
王子を乗せて黄色い車で冬の由比ヶ浜までドライブしたことがある。

「別れのドライブ 由比ヶ浜 そして真冬の風が吹く」

それを、またやってみたい。 

王子が、大きくなってしまわないうちに。

成長して欲しい気持ちとは裏腹に。

ペルノーを、いや、ビールかシェリーか赤ワインでもいい、飲みたい。

― Ciao ―
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# by y_natsume1 | 2009-05-31 12:52 | 鎌倉湘南Seaside

早朝の鎌倉光明寺 ~キミはショッカーを見たか?~

2009年5月23日(土) 早朝。

車で鎌倉の光明寺へ。

都内の家を出てから第三京浜、横浜横須賀道路を経て
約50分で渚橋辺りまで着いてしまう。

朝が早いと得した気分。

メンタル不調に加えて胃も痛い。 

仕方なく金曜夜でもお酒を控える。

そのかわり土曜の朝、4時か5時くらいに早起きする。

そして車で鎌倉のお寺(それも大抵はお気に入りの光明寺)に来る。

そういうことが最近はわりと多くなった。


・・・・・・ いつものように、光明寺の山門そばの駐車場に車を停める。

車を降りたらすぐに、
お香の良い匂いが辺り一面に立ち込めているのが感じられる。

ちょうど朝のお勤めの後なのだろう。

週末とはいえさすがにまだ朝の6時台。

もともと主要な観光ルートから外れていて、
冬場だけでなく春や夏でも普段から観光客の少ない光明寺だけど
(だから穴場でいいんだけど)、

この時間帯ではさらに人がいない。

ほんの2~3人、
地元の人たちが犬を連れて散歩がてらお参りにきているぐらい。

静かでいい。

山門から本堂に進む。


ここの山門が好きだ。

そして、この寺の本堂の構えや畳が好きだ。

理由は特にないけど。

落ち着く。

拝んだ後、しばし本堂の中の畳に座り、
瞑想にふける。

誰もいない。

お香の、とても いい 匂い。

気持が安らぐ。


・・・・・ 立ち上がり、

うしろを振り返ると、

あの時と同じように、いにしえに向かって走り去っていくような

山門への道が伸びている。

異次元のどこかにタイムスリップしそう。


歩いて山門を出て、

まだまっすぐ、

観光客にはあまりわからないような、
車も通れないような目立たない小道をそのまま進む。


すぐに海が開ける。

材木座海岸だ。

寺のすぐそばに海岸があるなんて、
一見、想像もつかない周りの光景なのだけど、実は近くなのだ。


サーファーがちらほら。
犬を連れたカップルや家族連れも。

ぼーっと海をみつめて、波の音を聴く。

視線をもっと西側に向ければ、
そこは由比ヶ浜のあたりだろうか。

あのバーの、イケメンのマスターは
今頃どうしているだろう

また会いたいなぁ。

僕は、今ほどじゃないけど、
やはりどうしようもない時期があって
その際そこのマスターにはお世話になった――。


・・・・・ 前回光明寺に車で来たときは
あまり気分はすぐれないままだった。

自分の好きな空間だからといって
常に気分転換できるとは限らない。

ただ、
今回はとても良い感じ。

少しずつ、少しずつ。


帰ったら、コーヒーに炒り卵とトーストの朝ご飯が欲しい。

まるで独身の1人暮らしみたいだな。


関係ないけど、もうすぐ公開予定の仮面ライダーの映画で、
死神博士と地獄大使が30数年ぶりに復活するらしい。

懐かしい。

死神博士は石橋蓮司、地獄大使は大杉漣だとか(笑)。

楽しみ。

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♪ テーマ曲 「材木座海岸」 by 妹尾武 ♪
♪ テーマ曲 「ブラックサンドビーチ」 by 加山雄三 ♪
♪ テーマ曲 「With Tomorrow」 by Neal Casal ♪
♪ テーマ曲 「Jack and Diane」 by John Couger Mellencamp ♪
♪ テーマ曲 「Siren」 by doa ♪

関連記事:

「材木座 そこに海あり 命も果てず」
「光明寺の調べが 材木座の海に 届くころ」
「十六夜の月 於鎌倉」
「由比ヶ浜に 酒の神 在り」
「京の女に言ふ (2)」
「別れのドライブ 由比ヶ浜 そして真冬の風が吹く」

(注) 材木座の名称のいわれ:

(Wikipediaより引用)
名称は鎌倉時代に鎌倉七座(米座、相物座、博労座、炭座、材木座、絹座、千朶積座)という商工組合があり、これに由来する。江戸時代には材木座村と内陸側の乱橋(みだればし)村に分かれていたが、のちに合併して大字「乱橋材木座」となり、これが住居表示に伴い材木座一丁目-六丁目となった。
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# by y_natsume1 | 2009-05-23 10:54 | 鎌倉湘南Seaside

春宵の響 ~池月橋で笛の音を~

2009年5月13日(水) 夕刻。

狂いに狂っている精神状態。

まさに、どこまでつづくぬかるみぞ、だ 
(西東三鬼の短編 「神戸」の中の「第8話 トリメの紳士」 の最後の一文)。

せめて、ほんのひと時だけでも、癒しの異次元空間にトリップしようと、
洗足池へ。

ここで、毎年5月に行われる、春宵(しゅんしょう)の響(ひびき)という、
雅楽演奏会を聴いてみたくなったからだ。

車でそばを通りかかったことは何度かあるけれど、
洗足池公園の中に入るのは初めてだ。
ここに勝海舟の墓があることさえ知らなかった。


・・・・・・・・・ 池の西側に神社がある。

神社の赤い鳥居あたりに、
鼓の演奏場所がセットされ、ライトアップもされている。

その周りにはパイプ椅子で客席が設けられている。
既に老若男女、大勢見物客が来ている。

無料なのが嬉しい。

・・・・・・ 演奏が始まる。

池に浮かべた小船と池月橋という太鼓橋を舞台に見立て、
少しずつ進む小船にも、橋にも、
笛の演奏者がいて、音を奏でている。

幻想的な光景。
源氏物語の世界??

だんだんと暮れてゆく池のほとりで
笛や鼓の音色を楽しむ。

なんと雅で風流なことか。

演奏曲は、
荒城の月、おぼろ月夜、月の砂漠、など、
月に関係したものが多い。

ステキだ。

この夜、残念ながら月は見えないが、
見えなくても良いのかもしれない。


ねぇ、誰か、僕のために、万葉集の中のどれか、
恋の歌でも詠んでおくれよ、とさえ思う。

ねぇ、月子さん(仮名)、
僕に歌を、 詠んでくれないか?


僕は、今、
凝縮された小宇宙に存在している。

絶望的な希望と共に。

見えない月を、探しながら。


そしてまた、もうすぐ、
あの醜い世界に僕は戻らなければならない。

ねぇ、月子さん、
僕は、今度はどこに 居ればいいんだろうね?



笛の音は、小船と池月橋の双方から鳴り響いている。

それは、既に初夏の様相を呈している草いきれ漂う夜に、
命の源を月に向かって発射しているかのごとくだった。

いや、

見えない月に向かって、僕自身を、

僕自身の命を――。


♪ テーマ曲 「朧月夜」 by 古武道 ♪


*********************

<以下は 洗足池Wikipedia より引用>

千束八幡神社(せんぞくはちまんじんじゃ)は、洗足池の西のほとりに鎮座する神社である。品陀和気之命(応神天皇)を祭神とする。「旗挙げ八幡」とも呼ばれる。

860年(貞観2年)に千束郷の総鎮守として宇佐八幡から勧請された。10世紀前半の平将門の乱の際に鎮守副将軍として派遣された藤原忠方は、その後に千束八幡を氏神としてこの地に残り、池上姓を名乗ったという。また、11世紀前半の後三年の役では、奥州討伐へ向かう源義家が戦勝を祈願したとここにも伝えられている。

1180年(治承4年)、安房国から鎌倉へ向かう途中の源頼朝がこの地に宿営したところ、池に映る月のような姿のたくましい野生馬が現れこれを捕らえたとの伝承が残る。後に宇治川の先陣争いで佐々木高綱を乗せ、梶原景季の磨墨と競うことになる、名馬「池月」である。頼朝軍はこれを吉兆とし、旗を差し上げ大いに喜んだという。本堂の横に赤目で歯をむく池月を描いた大きな絵馬が奉納されており、さらに境内には池月の像が置かれている。

例大祭は9月に行われており、重要無形民俗文化財に指定されている神楽が奉納され、洗足池の秋まつりとして親しまれている。
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# by y_natsume1 | 2009-05-14 21:50 | Music Bang Bang

暮れ六つの ボールパーク

2009年4月9日(木) 暮れ六つ(午後6時ごろ)にあと四半刻ほどという頃。

久しぶりに神宮球場へ。

東京ヤクルトスワローズ 対 中日ドラゴンズ

のナイトゲーム。

スワローズの40周年記念でチケットの割引クーポンを頂いたので。

******************

この数年、日本のプロ野球はあまり面白くない。

やたら間延びして、長たらしいし、応援団は管楽器でうるさいし。

けれど最近のWBCで個人的に盛り上がったせいもあって、
今回は久しぶりに生で、野球を観てみるか、と。

以前シカゴのリグレーフィールドやトロントで観たMLBには感動したなぁ。

試合もそうだけど、球場の雰囲気や売店や応援のマナーを気に入った。


僕は野球に対して斜に構えた態度をとることがある。

フクザツで、素直じゃないのだ。

運動神経がないから野球をやるのは苦手だけど、
プロ野球や大リーグなら、観るのは結構好きなくせに、
斜に構えた言動をしてしまう。

理由の一つは
実父に対するコンプレックスやヒガミからだろう。

父は、
四国の高校(僕や父や母などの母校)、
大学(神宮球場、金銭的理由で1年間で自主退学するまでのわずかな期間だけど)、
ノンプロ社会人全国制覇(後楽園球場)
などを通じてずっと野球選手。

プロ野球経験者や有名な野球関係者の友人も数多い。

彼は母校の高校の野球部監督もやった。

それに比べて僕は野球だけでなく、
基本的にスポーツをやるのは好きじゃないし、苦手だ。

おまけに、僕が3歳の頃両親が離婚して、
40歳の時37年ぶりで再会するまで、その間実父に全然会ったことがなかった。 

そんな実父への複雑な心境もあって、
野球なんか、と思い込もうとしてしまうのだろう。


*******************

―― 神宮球場に到着。

この球場に来るのは久しぶりだ。

へたしたら20年ぶりぐらいだろうか。

春というより、日中はもう初夏のような気候。

夕方は涼しい風が吹いて、とても気持がいい。

西日が強い。

スタジアムの回廊を1塁側外野席に向かって歩きながら、

ああ、この建築物はステキだな、昔ながらの雰囲気があって良いな、
なんて思ってしまう。

新しく建てられた球場には残念ながら、新しいだけに、
こういう味のある「趣き」というものが、ない。


回廊の途中で売り子さんたちの控え室というか待機所が目に入る。

ビールのタンクをしょったアルバイトの若い女の子たちが、

「よっしゃ! 今日も行くよ!」

と声を掛け合っている。

いいねぇ、いいねぇ。 ウキウキする。

ボールパークの雰囲気。

外野自由席のチケットを割引で購入し、

ビールと焼き鳥を買って1塁側外野席スタンドに入る――。


―― キレイだ!

なんてキレイなんだろう。

座席のブルーと人工芝のグリーンのコントラストが色鮮やか。
(本当は天然芝の方が好きなんだけど仕方がない)

それに、既にともっている照明がグラウンドをより一層、
カラフルに、鮮やかに見せてくれる。

3塁側方向を見ると、夕陽が沈んでいく真っ最中。

もう、むちゃくちゃキレイ。

子供たちや中年おじさんのファンだけでなく、
スーツを着た20代の若手サラリーマンが、
同じく真新しいスーツを着た女の子たちと何人かのグループで来ている。

この日はこういうグループを結構何組か見かけた。

女の子が、「うわぁ、こんなにキレイなんだ、球場って」

と感動していて、連れてきたらしい男の子たちも得意気だ。

照明の影響も、大きいんだろうね。

********************


・・・・・・・ 昭和30年ごろ、大学1年の実父はどんな思いで、
この神宮で遊撃手としてプレーしてたんだろう――。


********************

球場では、
試合の始まる前の、約30分ほどの時間帯が、
僕はとてもとても好きだ。

スタンドに入ったとたん開けてくる視界。

もうすぐ始まろうとする試合の前に、
いろんなアトラクションで楽しませようとする企画。

キャッチボールをする選手たち。

そんなことを思ってたら、

いつのまにか僕は涙を流してた。

こんなに心が踊る「空間」だったとはねぇ。


野球に対して斜に構えてはいるけれど、

本当は子供の頃、
父と一緒にプロ野球を観たかったんだろうな、僕は。 


1970年代、僕が小学生の頃、 
3度だけ関西方面でプロ野球を観た。

四国からわざわざ行くのはとても贅沢で、
貴重な機会だった。

大阪球場、西宮球場、甲子園球場。

関西に出張する母に連れられて、仕事のあとで、という感じで。

例えば、
今はなき難波球場 (地元大阪育ちの母は大阪球場という正式名は口にせず、いつも難波球場だ)で観た、南海ホークス(現ソフトバンクホークス) 対 ロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ) の試合。 

先発したロッテの村田兆治投手のマサカリ投法は今でも鮮烈に覚えている。

僕は、野球を観るのも好きだけど、

たぶん、ボールパークという 「空間」 が大好きなのだと思う。

映画も好きだけど、
 
昔ながらのレトロな映画館が大好きなのと同じように。


******************

暮れ六つ(午後6時)、プレーボール。

ビールも焼き鳥もうまい。

精神的にはとても贅沢な、素晴らしい娯楽だ。

試合展開は乱打戦気味。

展開が速いのか遅いのか、よくわからん。

日が沈むのが早い。

風も涼しいどころか、ちょっと肌寒くなってくる。

そうそう、球場の上の方の席って、地べたより結構寒い時があるんだよな。


この日の試合は両軍とも投手の調子が悪く、よく点が入る。

スワローズが点を入れるたびに、
外野席ではスワローズファンがミニのビニール傘を開いて東京音頭で盛り上がる。

いいねぇ、野球。


空を、見上げる。

ドーム球場だとこうはいかない。

ドームは圧迫感があって、あんまり好きじゃない。

空を見上げたけど、

都会だし、ものすごく強い照明で、

当然ながら星は見えない。


でも、月ぐらい見えるはずなのに、見えない。

今夜は暦の上では、 満月のはず。

ボールを追いかけているうちに、月を追いかけてしまう、狂った僕。



ねぇ、父さん、

神宮球場、もう一回、来たい?

たぶん、「別に。 どうでもええがな」、って言うんだろうね(笑)。


♪ テーマ曲 「Blue Moon」 by Frank Sinatra ♪
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# by y_natsume1 | 2009-04-11 16:36 | 日々の雑文

いにしえの 鞆の浦

このところ、なぜか 鞆(とも)の浦という土地の名前が 
よく僕の視界に入ってくる。

鞆の浦は広島県福山市の沼隈半島にある、大昔からの港。
万葉集の歌にも出てくるほどだ。

「江戸時代の港湾施設である「常夜燈」、「雁木」、「波止場」、「焚場」、「船番所」が全て揃って残っているのは全国でも鞆港だけ」

なのだそうだ(Wikipediaより)。


宮崎駿が「崖の上のポニョ」の構想を練った所として
鞆の浦が紹介されている新聞記事を見つけたこともある。

(「崖の上のポニョ」という映画自体は観ていないので論評は差し控える。)

一方、ポニョと対比される形で、
最近の埋め立て華僑工事計画とその反対運動も
新聞記事に出る。

地元民の考えはいかに・・・・。

僕はなぜかその両方の記事をスクラップしていた。

先日、万葉集の解説本を手にとってぱっと開いたら、
偶然そのページが、

鞆の浦に関する大伴旅人の歌だった。

ちょっとびっくり。

やっぱり「鞆の浦」が 僕を呼んでるんだろうかねぇ。

近いうちに、ぜひ、行ってみたい。

ついでに厳島神社と、尾道にも。

******************

尾道は大学時代に1人旅で1度だけ行ったことがある。

あの頃から1人でどこかをふらりと、そしてふわりと旅するのが好きで。

尾道駅前の案内所で近くの旅館を紹介してもらい、
泊まった。

そこの女将さんからは
大林監督の映画ロケのエピソードやロケ地の場所を
夕ご飯のときに教えてもらった。

良い思い出だ。

******************

僕は小さい頃、彫刻刀やカッターナイフで鉛筆だけでなく、
何かをひたすら削り続けていた時期がある。

まるで何かにとりつかれたみたいに。

いいかげんにやめれば良いものを、
何度もそれで指を切っては血を流していたものだ。

懐かしい。

今、僕は神社仏閣を、建ててくれた職人に思いを馳せながら楽しむのが、
なぜか大好きだ。


僕の前世の一つは、

まさか、

いにしえの宮大工か、船の職人だったんだろうか。

だから、大昔の雰囲気が少しでも残るその港に、
鞆の浦に、行ってみたい。


鞆の浦で月を見つめ、

万葉の時代の、ルナティックになって、

狂いながら月に吠えたいものだ。


♪ テーマ曲 「風を撃て」 by キリンジ ♪
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# by y_natsume1 | 2009-04-07 20:16 | アジア的独白

ベリーさぬき的一日 ~ほっこまい  高松純情シネマ~


人は、必要な時に必要な物に出会うそうです。
夏目さんはそれを呼ぶ力が強い気がする。



先日、Nさんから頂いたコメントが、このところよく頭をよぎる。

*********************

2009年4月1日(水)。

この日は今思えば、「ベリーさぬき的一日」だったといえよう。


朝、いつものように
亡き祖父と実母の写真(二人とも故郷香川のお墓で眠っている)に
手を合わせてから仕事に。

昼休み、映画の日だなぁ、なんか良さそうなのないかなぁ、
とネットで見ていたら、

「ほっこまい 高松純情シネマ」 

を偶然(? それとも必然?) 見つけ、 がぜん注目。

シネマート新宿で3月28日から1週間だけ、1日2回の上映、とのこと。


1970年の故郷香川県を舞台にした、映画マニアの高校生を描いているらしい。

チラシはここ

原作は香川県のFM局で映画ナビゲーターをやっている帰来雅基の「高松純情シネマ」

実は、僕は数年前にこの原作エッセイを読んでいた。

よし、この映画、観よ。  

決めた。


****************

夕方、会社を出て新宿に向かう途中、
携帯にメールが入る。

うちの王子は近所の義父母(=王子の祖父母)の家に泊まるそうだ。

はいはい。 春休みだしね。

僕は香川にいる継母(実父の再婚相手)に携帯で電話をかける。

誕生日おめでとうございます、と。

実父は出かけていて留守。 話せずじまい。



・・・・・ やがて、映画の時間。

面白いことに、この日の夜の上映前に高嶋監督のトークショーがあり、好感。

この映画に友情出演してる高畑淳子も監督も原作者の帰来雅基も、
地元高松高校(県下一の進学校)の同級生なんだそうだ。

ふーん。

映画は60分。 

さぬき映画祭2007優秀企画としての作品なので上映時間は短い。

屋島や高松市内のロケ地、昼休みの学食のうどん、
琴電、 当時の車、magの印象的な主題歌 ・・・・・。

一般的映画ファンや香川県にあまり縁のない人たちには
どう受取られるか分からないけど、

僕のような、あの時代前後にそこで過ごした人間にとっては
とても懐かしい気持ちにさせてくれる映画だ。

なにより、映画ファンにはたまらないぐらい、
1970年前後の映画のエピソードやポスターやパンフレットなどがわんさか出てくる。

映画フィルムの編集機(スタビライザー)まで出てくる。

すごい。


いちご白書、小さな恋のメロディ、
ある愛の詩、大空港、続・猿の惑星・・・・。


映画の後、思わず「ほっこまい」のパンフレットとCDを買ってしまった。

パンフレットの最後のページには、
香川県にあるこの映画の協賛企業や商店の名前がずらり。 

まるでよく知ってる地元商店街の宣伝チラシみたいで微笑ましい。

****************


映画好きの僕が高松市内の映画館で映画を観始めたのは、
この映画の登場人物たちよりも数年後だ。

1970年代後半、中学生になってからだった。

僕の実家は高松市からだいぶ東にある瀬戸内海沿いの海辺の小さな町。

国鉄(当時)で1時間ぐらいかけて、田舎町から高松という大都会に映画を観に行く。

1回行くと、交通費がもったいなくて、数軒の映画館をはしごする。

高校のころは、平日の昼間に授業をサボって
わざわざ高松まで行って
ジェームス・ディーンの「エデンの東」や「理由なき反抗」なんかを観たこともある。

そして、僕もこの映画の主人公のようにパンフレットやチラシを集めまくっていた。

今もし手元に全部あれば相当な量だろうし、
売れば(手元にあっても売らないけど)かなりの金額になるだろう。

今ごろ、多分誰もいない実家のどこかにあると思うけど。

「ほっこまい」という方言は僕にはわからない。

僕の実家のある地域では使わない。
高松の言葉かも。

でも、同じく映画にでてくる 「もう、じょんならん」 という方言はすぐわかった(笑)。


高松に映画を観に行くようになるまでは
地元の田舎町にも戦前からの古い映画館が1軒だけ残っていて、
小学生の僕はそこでよく何かを観ていた。 

最後の上映は、数ヶ月遅れの「日本沈没」だったなぁ。

ニューシネマパラダイスみたいな日々。

うどん、食べたくなった。


この日はベリーさぬき的一日。

東京の義母と、故郷さぬきの継母と亡き実母と。


・・・・・ 映画館を出たら、
僕の携帯に留守伝が残ってた。

(酔っ払ったのであろう)香川にいる実父からだった――。


この日は朝から晩まで、ずっと、ベリーさぬき的時間だな。



♪ テーマ曲 「夢からさめても」 by mag ♪

<追記>

・ 1970年代に僕がよく観に行った高松の主な映画館は、今はもう存在しない。 ライオンカン、スカラ座、玉藻劇場、大劇パラス・・・・。 寂しいことだけど、それが現実でもある。

・ 「ほっこまい」 に出てくる、劇場モギリ役を演じているのは、志水季里子。 にっかつロマンポルノにもよく出てた。 昔から結構好きな女優さん。 そして、「ほっこまい」で新聞部のチアキを演じていた少女ひろせ友紀は志水季里子の実の娘だ。 「八月の濡れた砂」で主演していた故・広瀬昌助との間の娘さんだそうだ。 月日はいつのまにか流れ、 時代は、変わるもんだな。 
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# by y_natsume1 | 2009-04-02 20:39 | 過去の映画評「は」

ヤッターマン  おしおきだべぇ~

2009年3月某日。

僕以外の家族3人が、春休みに入ったところで
実写版映画ヤッターマンを観てきたらしい。

自宅にあったパンフレットが僕の目に留まる。

開くと、結構興味をそそられる。

ドロンジョ、ボヤッキー、トンズラー、ガンちゃん、愛ちゃん、どくろべぇ・・・・・。

渋山(渋谷がモチーフ)の街並みやコスチュームなども、
お金かけてる感じがしたし。

で、やっぱりどうしても観たくなって数日後に
会社帰りの夜に、 1人で行ってみる。

主題歌も設定も決め台詞も、
僕が小学生の頃に毎週観ていたアニメ版と変わらず、

懐かしくて嬉しくなる。 もう、大ウケ。

そりゃ、物語や設定自体はくだらないといえばくだらないんだけど。


これ観て、思った。

キャシャーンといい、ガッチャマンといい、ヤッターマンといい、
タツノコプロは当時から頑張ってたな、と。

ヤッターマンの次は、ぜひガッチャマンを実写版でやって欲しいものだ、と。

2007年4月ごろに確か、日活が、
ヤッターマンとガッチャマンの実写版映画を製作するって同時に発表したのに、

ガッチャマンの方はまだ製作が進んでいないみたい。

キャスティングもまだ発表されていない。

ガッチャマンは数年前、
NTTドコモのテレビCMでSMAPの5人が出演して、
近未来の渋谷109近辺を舞台に実写で撮られていたのを思いおこす。

あのときに一度あった、SMAPでの実写映画化の企画は、
結局はコケたらしいけど。


あのCM、良かったな、かなり。

ああいう感じで、やってくれよ、ぜひ。

やってくれないと、

おしおきだべぇ~。

♪ テーマ曲 「ヤッターマンの歌」 ♪

関連記事:

「科学忍者隊ガッチャマン VS エイトマン」
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# by y_natsume1 | 2009-03-31 20:18 | 過去の映画評「や」

春のシュートはくやし涙と共に

2009年3月29日(日) 朝。

王子(6歳、幼稚園年長、4月より小学1年生)の所属するサッカー教室。
そこが主宰する幼児サッカー大会へ。

結構大々的。 全部で20~30チームは参加しただろう。

幼稚園児なのでパスよりもおしくらまんじゅう状態のような試合も多いが、
結構上手な子供もいる。

午前中に予選で2試合する。
その結果で、各ブロックの1位がベスト8として
午後の決勝トーナメントに進む。

王子の幼稚園チームは、参加人数が少ないせいで他の幼稚園と連合。
でもありがたいことに、王子がエース、キャプテン扱い。
試合前のキックオフとサイド決めのジャンケンもうちの王子がやらせてもらう。

第1試合 6対0で勝(5点は王子のシュート)。
第2試合 2対2で引分(2点は王子のシュート)。

得失点差で余裕で1位、決勝トーナメントに進む。

午後、
決勝トーナメント初戦 0対2で負。
(王子たち皆の奮闘も、強豪相手には敵わず)。

試合中、うちの王子のプレーを見て、味方のお父さんたちだけでなく、
対戦相手のご父兄からも、

「あの21番の大きい子、すごいね、ガンガンシュート打つなぁ」
「ドリブルで1人で最後までもってくんだよね」
「21番、目立ってるね、良い動きだねぇ」
「あの21番に気をつけなきゃ」

と口々に言われていた。

運動音痴の僕としては、
親バカではあるけれど誇らしく嬉しくてたまらなかった。

(心の中で、あれ、うちの子なんです、と。)

彼のプレーは大人から見ても、
幼稚園児にしては
ドリブルもパスもシュートも一応サッカーの「形」になっている。

僕はスポーツはからきしダメ。
本当に運動は苦手だ。

けれど僕の実父は、
大学(神宮球場)、ノンプロ社会人(後楽園球場)で野球をやっていたスポーツマン。
高校野球の監督もやっていたし、プロ野球経験者の友人も多い。

王子の運動神経は、だから、
祖父からの隔世遺伝なんだろう。


それにしても、
この日計3試合で王子が7得点したシュートよりも、

むしろ引分や負け試合のあと、くやし涙を浮かべて、
くそっとPoleを叩いていた王子に、ジーンときた。

くやしいと思う気持ち。

上には上がいるという事実。

1人だけではなかなか勝てるものではないという現実。

こっちの方も、大事だよな・・・・。


―― この数ヶ月、 僕の精神状態は一進一退だ。

決して良くはない。

イライラして狂ってしまったり、妙に重苦しく無口になったりの繰り返し。

けれど、この日、良い感じに咲いてきた桜と王子のプレーは、
僕をとても幸せにしてくれている。

少しずつ、少しずつ・・・・・・なんだろうな。


♪ テーマ曲 「桜」 by コブクロ ♪
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# by y_natsume1 | 2009-03-29 18:46 | 子供語録

亜空間の果て (4) ~いにしえのかたりべ~

2009年3月19日(木) 夜。

袋小路にはまったような、もどかしい精神状態。
気が狂いそうになる毎日。

たまたま数年ぶりに某友人とコンタクトが取れる。

この人とはかれこれ7~8年の付き合いだ。
僕が心から信頼している人の一人。

その友人が今、ある飲み屋で働いているという――。


**************

お寺の境内に建っている日本家屋の一軒家で、
その飲み屋は営まれている。

「お寺」、「お寺の敷地内にある」
という部分に敏感に反応し、魅かれて、
とうとうやって来てしまった。

ホントにここは東京都内か?

不思議な時空。

ここでは男も女も、まるで桃源郷にいるかのように、
何かを楽しんでいる。

会話、酒、日本家屋の空間、花、そして・・・・。

僕はこの不可思議な空間を、
この世とあの世のはざまに存在する、いわば亜空間として、
トリップしているような感覚で味わっていた。

癒されている、というのではないし、
馬鹿騒ぎして楽しんでいるというのでもない。

味わっているとしか言いようのない空間、
けれどとても「良い感じ」なのだ。

ここに導いてくれた某友人に、とても感謝している。

アリガトウ。

僕は、友人といろんな話をした。

ヘンリー・ミラーの「北回帰線」の話から僕たちはペルノーを頼み、
京都知恩院と鎌倉光明寺のご縁
ザ・フーのライブ、ベンシャーマンのシャツ、
出張先で明け方に酔っ払って「Love Reign O'er Me」を大声で歌ったこと、
セックス、万葉集や和歌の話(31文字のラブレター)、
奈良薬師寺の月光菩薩、東塔の水墨画のような佇まい
福岡のぼたやま、五木寛之の「青春の門」、
その日僕が着ていた古着のツィードジャケット
シンガポールの大親友、 墨の香りのフレグランス、写経、
坂口安吾の「桜の森の満開の下」、狂気、
マラッカ出身の友人とシンガポールのチャイナタウンを歩いたときの話
花様年華、白洲次郎、レトロな大衆食堂、1920年代の上海、
「馬鹿な(=良い意味で馬鹿を演じられる)オンナ」・・・・・

いろんな話をした。


不思議とお月様の話は出なかった。

こういう夜は、それで、   いいのかもしれない。

充実した時間だった。

この空間が、それを作ってくれたのだろうと思う。

やはり、ヘンリー・ミラーが「北回帰線」のラストで書いているように、
人間には時間よりも空間が必要なのだ。


夜が更ける。


・・・・・・ 月が見えない夜、
さあ、再び月を求めて、 さ迷い始めようか。

亜空間の果てまで、行ってみようよ、 ね、 月子さん(仮名)。

♪ テーマ曲 「Greensleeves」 by John Coltrane ♪

関連記事:

「亜空間の果て」
「亜空間の果て (2) ~赤い月の夜~」
「亜空間の果て (3) ~九つの満月~」
「The Who を追いかける夜」
「光明寺の調べが 材木座の海に 届くころ」
「チャイナタウンを駆け抜けろ ~横浜もブライトンも~」
「31文字のラブレター (1)」
「東の塔は 墨絵の如く」
「桜の森の満開の下 ~酔いどれのシュールな夜~」
「シンガポール出張 (7) ~チャイナ・タウンの休日~」
「映画 「花様年華」(2000) ~チャイナドレスにため息を~」
「箱根の山は まだ肌寒く」
「素晴らしきレトロな大衆食堂」
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# by y_natsume1 | 2009-03-20 19:20 | Moon

12弦ギターの音色

普通のギターって6弦でしょ?

12弦なんてどうやって弾くの?

(12本も弦を)押さえるの、指が足らなくて大変じゃないの?

**************

僕は6弦ギターは中学生の頃から、
12弦ギターは高校生になったあたりから、
弾き始めた。

当時親しい女の子の友達から、冒頭の質問をよくされた。

今、12弦のアコースティック・ギターは
自宅の押入れの中で眠っている。

もうギターには何年も触っていない。

12弦のうち1本だけ、一番細い弦が切れていて、
それを張りなおそうとしたけど何度やっても切れてしまうので、
そのうちあきらめた。

もうギターを弾くこと自体は当分ご縁がないけど、それでいいんだよ、
という神様のお告げかと思い、
そのままにしている。

12弦ギターは、

6弦ギターの弦の並びに各々オクターブ高い細い弦が張られていて、
いわば2本で1対(1セット)の、6弦×2になっているだけのギターだ、

と言えば良いだろうか。

だから、(右手でギターを弾く人の場合だけど)
左手のフレットの押さえ方も、6弦ギターと変わりない。

違うのは、右手のピッキングで鳴る音の響き。

ピッキングがアップかダウンかで変わってくる。

アップならほぼ通常の音だけだけど、
ダウンなら通常の音に加えてそのオクターブ高い音が同時に鳴る。

特に6弦から4弦はダウン・ピッキングになるのが普通だから、
(それを狙っての弦構成だから当たり前だけど)良い響きになる。

ピックを使ってスリー・フィンガー奏法をやると、
規則的な弾き方をしているのに、
低音と高音を行ったり来たりしている譜面になるかも。

まるで、この世とあの世のはざまを行き来しているみたいに。

弦全体をストロークで派手に弾くと、
6弦のときの響き方とは違って、
シャリシャリいってる感じ。

12弦でメジャーセブンスのコードをじゃらーんと弾くと、
6弦よりももっと深みのある、いい響きが増す。

なんだか、真実と虚構の間に、
少しだけずれた、グラデーションみたいな何かが
挟まっているような音だ。


12弦ギターを意識して使っていたのは、
アメリカ(国名じゃなく、バンドのアメリカ)とかCSN&Yあたりか。

でも日本だと、すごいのはやっぱり加山雄三。

この人、日本で初めて本格的な多重録音をやった人だけど、

昭和40年(1965年)前後で既に映画の中で
12弦のエレキ・ギターを演奏しているシーンがある。

(例えば、「レッツゴー!若大将」での「フォー・オクロック」という自作曲の演奏シーンなど。)

12弦どころか6弦のエレキや生ギターでさえ、
演奏できればすごかった時代だろうに。

大ファンである。

**************

伊勢正三の 「22才の別れ」 という曲の場合は、
12弦ギターの演奏のように聴こえるけど、
実は6弦ギターの重ね録り。

この曲のレコーディングでは、
6弦の生ギターにエレキ・ギター用の細い弦を張って、
変則チューニング(俗に言うナッシュビル・チューニング)で、
いくつかオーバーダビングする形で
録音したんだそうだ。

(アレンジャーの石川鷹彦・談)

6弦ギターで12弦の効果を出そうとしたってことか。
6弦のナッシュビル・チューニングでの演奏を確認するには
↓これが一番だろう。

ナッシュビル・チューニングでの「22才の別れ」

「22才の別れ」 は1970年代の、
僕らが中学生の頃の、アコースティック・ギターの定番曲だった。

この曲は別に12弦でなくても、
通常チューニングの6弦でやっても十分いけてるし、
伊勢正三はライブでも普通の6弦演奏なんだけどね。

でもシロウトが真似するなら、12弦でやった方が
レコード(今はCDか)の演奏に近い感じに聴こえると思う。

イントロや間奏のリード・ギターや
7フレットのハーモニクス等の奏法も
カッコよかった。

その後何年かして、1984年、倉本聡脚本のTVドラマ 「昨日、悲別で」
のエンディング・テーマにこの曲が使用されてリバイバル・ヒットした時は、

何だか自分が急に年をとったような気にさせられた。

ドラマのストーリーのせいか、
この曲の最初のヒットから10年近くたっていたからか・・・。

僕はその時、まだ22才にさえも、なっていなかったけど。


こんなこと書くから、

お前、世代が確実に一つか二つ、違うくねぇか、
映画といい、音楽といい、お寺の趣味といい、
まるで団塊の世代として生きてたみたいな話だな、

と年上の飲み仲間に言われるのであるが(苦笑)。

でも、実体験としてそうなのだから仕方がない。

四国、瀬戸内海の海辺のド田舎にいたけれど、

小椋佳やユーミンを初めて聴いたのは小学5年生(1975年)だし、
井上陽水のアルバムを大音量で聴いたのは中1(1977年)のときだ。
中学生の頃はブレッド&バターもピンクフロイドもよく聴いた。

リアルタイムに近い。


*****************

イーグルスの 「ホテル・カリフォルニア」 のイントロも、
自分でも12弦の生ギターで7フレットにカポタストを付けて弾いてた。

僕はそもそも楽器の才能がないから、
「ホテル・カリフォルニア」のような難曲なんか、
エンディングのソロはちゃんとはできない。

イントロと歌のバッキング演奏ぐらいで十分楽しい。

昔のビデオクリップを見ると、
イーグルスのドン・フェルダーはこの曲をライブで演奏する時、
12弦(7フレのカポタスト)と6弦のエレキのダブルネックギターでやっている。

********************

今思うと、12弦ギターをやるなら、
ドゥービーブラザーズの曲なんかを真似して
普通にストロークでやってた方が、カッコよかったかも?

ドゥービーブラザーズは
12弦の生ギターを使ってもサマになりそうな曲がわりと多かったから。

でもやっぱり 「ホテル・カリフォルニア」 かなぁ。

6弦の生ギターだと、ポール・サイモンの曲と彼の奏法もいいなって、
すぐ思い浮かぶんだけどね。

********************


12弦で通常の音とそれよりオクターブ高い音とを、行ったり来たり。

1970年代とその少し先の未来とを、行ったり来たり。

この世とあの世のはざまを、行ったり来たり。


・・・・・ 月子さん(仮名)、 

いったい僕は、 どこに居ればいいんだろう?

教えておくれ。


僕の12弦ギターは、いまだに1本、弦が切れたままだ。

切れたまま、僕自身も切れて、気が狂いそうになる。


ねぇ、 月子さん。

僕は どこに  射精すれば いい ?


♪ テーマ曲 「22才の別れ」 by 伊勢正三 ♪
♪ テーマ曲 「Hotel California」 by The Eagles ♪
♪ テーマ曲 「Long Train Runnin'」 by The Doobie Brothers ♪
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# by y_natsume1 | 2009-03-15 18:14 | Music Bang Bang

素晴らしきレトロな大衆食堂

2009年3月1日(日) 正午過ぎ。

家族4人で多摩川近くのレトロな大衆食堂へ行く。

僕の義弟や、中目黒のバーZの元マスターAクンたちが、
野球の試合のあと、皆で必ず利用するという、この食堂。

昭和30年代の雰囲気をかもし出す店内は、
かなり広い。

広い店内なのに、既に満員。

すげぇ。

大勢のお客さんがいる。

しかも、見れば殆どの客が
昼間っからビールだの酎ハイだのを普通に飲んでいる。

嬉しくなる(笑)。

何種類かの大昔のビールの宣伝ポスター、
芸能人のサインなどが張ってある。

1人客のオヤジや、草野球帰りのチームメイトらしき中年男性が多いが、
家族連れやカップルも結構いる。

親に連れて来られたのだろう、子供たちが、
タバコの煙の中(健康には良くないが、この店内に似つかわしい)、
楽しそうにカレーやラーメンを食べている。

満員だったけど
入店して1分も経たないうちに僕たち家族4人が座れる。

回転がとても速い。


ここは麺類がうまいらしいし、
ワインもあれば、居酒屋のように日本酒や刺身まである。

相方はもやしラーメン、
姫はカツカレー、
王子は焼肉ライス(この店のイチオシだ)、
僕は五目ソバとギネス(黒ビールまで置いてあるなんてすごい定食屋)。

後で、鳥の唐揚げ、
ギョーザとライムサワーも。

それぞれが頼んだものを、少しずつ分け合って味見する。

うまい。

唐揚げの1個の大きさは普通の居酒屋の2~3倍もある。

焼肉ライスの甘辛いタレは絶妙。

安い。 うまい。 量が多い。

満腹。 満足。

ごちそうさま。

帰りに、
近くの某有名和菓子屋さん(高島屋にも出店している)で
豆大福を買う。

昼間のアルコールと美味しいご飯は、人を幸せにする。

♪ テーマ曲 「恋の季節」 by ピンキーとキラーズ ♪

関連記事:

「マスタード色を夜空に塗りたくれ」
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# by y_natsume1 | 2009-03-01 19:46 | ごはん

幼い頃の 神戸駅の思い出

2009年2月22日(日) 朝。

妹尾武の最新CD 「RETRO MODERN DANDY」 を聴きながら、

ジャケット写真を眺める。

b0058966_10332297.jpg








昭和27年(1952年)ごろの、
神戸三宮駅の写真だそうだ(撮影:佐伯幸雄氏)。

素晴らしい写真だと思う。


************

神戸といえば、三宮や元町ではないのだけれど、

神戸駅について、幼い頃の思い出がある。

昔の記憶というのは曖昧な部分と、
あとから付け足したり、都合の良いように思い込んだりしている部分も
もちろん、あるんだろうけど。

たぶん、僕が幼稚園ぐらいだっただろうか。
(だとすると1970年の、大阪万博の帰りかも?)


母親と2人、大阪からの帰り。

なぜか乗り換えの都合で、
たぶん明け方か深夜(?)のヘンな時間帯に
神戸駅にいた。

幼心に、ステキな駅の構内だと感じたのを覚えている。

1972年以降なら、山陽新幹線で岡山まで行き、
連絡船を乗り継いで僕が住む四国香川県に帰る。

それなら、
新神戸駅だ。

それが神戸駅だったのは、
今思えば、
まだ山陽新幹線が岡山まで開通していない時代だったからだろう。

深夜か明け方だったのはたぶん、
母親が仕事のスケジュール上、夜行か連絡船か何かで帰る
強行軍だったせいかもしれない。


・・・・・・ 待合室のベンチにボーっと座っていたのか、
歩き回っていたのか、

突然、 見ず知らずの男に話しかけられる。

相手も暇だったのか。

子供は他にもいるのに、僕を気に入ってくれたのか。

(あとで思い返すと、その男は俳優の左とん平の顔をもっとキツくしたような労働者風だった。 万博の建設が一段落して帰る出稼ぎ労働者だったのか。 とにかく、サラリーマンではなかった。)

楽しかった。

暖かな時間だと感じた。

ひとしきり話してしばらく経って、

その男は僕のところに再びやって来て、

「ボク、これ飲み」

と売店で買ってきたらしい、ふたを開けた牛乳瓶を差し出した。

僕はすぐさま、

「要らんわ」 と言う。

男は残念そうに、

「そうかぁ、要らんのか、ボク。 残念やな」

みたいなことを言って去っていく。


・・・・・・・ それだけのことだ。

それだけのことなのに、
大人になった今でも、あの牛乳とそれをすすめてくれた男のことを、
強烈に覚えている。

神戸駅のレトロな佇まいと共に。


見ず知らずの男と話すといっても、
今の時代ほど、ストーカーや通り魔的な犯罪なんぞはあまりなかった。

古きよき時代だったと言えなくもない。

男が僕の母親に近づきたくて僕に話しかけたとしても、
それはそれであり得ることだし、そんなことはどうだっていい。


本当はとても欲しかったくせに
牛乳を断ったのは、

母親の教育方針に従ったまでだ。

知らない人に物をもらってはいけない。

知っている人でも、いわれのない施しを受けてはいけない。


母親に嫌われたくなかったし、
いつも仕事で忙しい母親を、困らせてはいけないと思っていたから。


この神戸駅の思い出が、もし1970年前後だとするなら、
その頃、僕はたぶん、大人の男に餓えていただろう。

僕の実の父親が家を出て行って間もない時期だし。


大人の男と、遊んだり話したりしたかった。

あの神戸駅の男は、それを敏感に嗅ぎ取ったのか。


ちなみに1970年の大阪万博へは、
母親の大阪出張にかこつけて連れて行ってもらえたが、
実際に万博を案内してくれたのは、いつも忙しい母親ではない。

大阪の、母方の親戚(母の叔父、叔母に当たる)、
夏目(本名)のおっちゃんとオバハンだったと思う。

(僕のBlog名、ペンネームの夏目はここから拝借している。)

夏目のオッちゃんは、
三角形の紙パックに入ったコーヒー牛乳を買ってくれた。

帰りの神戸駅のときとは違って、
万博会場では5歳の僕は、素直にそのコーヒー牛乳を、飲んだが。


・・・・・・・・ あれ以来、神戸駅には一度も降り立っていない。

今もレトロな構内なんだろうか。

そもそも、神戸駅のエピソードが
大阪万博の帰りだったのかどうかさえ、
今となっては曖昧な記憶の断片でしかない。



とにかく、僕が当時本当に求めていたのは、

大阪万博の見物でもないし、
夏目のおっちゃんとのひと時でもないし、
神戸駅の明け方の牛乳でもない。

実の父と母と一緒に過ごせる、時間と空間だった。

いつも、1人だったから。

(小学校1年の時、1人で自分のためのオニギリを作りながら、
悲しくて、何かが切れそうになったことがある。 
昔も今も、決して両親を恨んでなんかいないけど、
あの頃はただとても悲しかったことだけは、確かだ。)



***************

神戸駅の、見ず知らずの男は、

そのすき間をついて、

僕に数分間の暖かい異次元空間を、もたらしてくれたのだろうか。

ありがとう。

♪ テーマ曲 「サクラ咲く」 by 妹尾武 ♪

関連記事:

「月子さんのお話 (4) ~遊郭の夕べ~」
「Blue Train」
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# by y_natsume1 | 2009-02-22 10:42 | アジア的独白

使者と巫女と月と

2009年2月10日(火) 夜。

この数ヶ月、仕事でどうしようもない僕。
落ち込んでいる。
あの職場は本当に、嫌だ。

満月の翌日の月は十六夜の月というんだっけ。

とても、美しい月が、天高く、見える。

月子さん(仮名)はどうしているだろう。
月子さんのところに今すぐ飛んで行きたい。

空間を、突き抜けられれば良いのにと、思う。


この日の夜、会社の行事に仕方なく参加したあと、
夜10時ごろ、1人で久しぶりにワインバーに。

湘南出身の店主に、
こないだ王子と2人で由比ヶ浜までドライブしたこと、
渚橋で美しい富士山とキラキラ光る海を見たこと、
由比ヶ浜で王子の足が波に濡れたこと、

なんかを話す。

店主はそれだけで、
映画みたいだね、鎌倉の海岸の光景が浮かんできて、
トリップしてしまいそうだ、と言う。


僕はそれに応えて、

映画っていえばさ、
昔のフランス映画の「男と女」だと、
ジャン・ルイ・トランティニヤンが小さな息子と
冬のドーヴィルの海岸で車を走らせるのに、
僕たち2人は全然映画みたいにカッコよくなかったよって。




深夜零時、自宅近くのソウルバーへ。

ほとんど満員。

カウンター席に座れず、首都高側の席へ。

この時間帯はまだ車が多い。

視界に入る車の台数の多さで、
見ていると気持ち悪くなる。

カウンター席に座って店主と話せるわけでもないから、
(マスターは気をつかって時々話しかけに来てくれるが)
ペルノー1杯で今夜は帰ろうと本気で思っていた。


でも突然、僕の頭の中にシンさん(仮名)が出てきて、

こういう夜を、楽しめば良いんだよ、
大丈夫、
もっと楽しくなるから、もう少し、いてみなよ、

なーんてことを言ってるような気がしてくる。

ホントかよ。

シンさん、あの世から何言ってんだい?



・・・・・ そしたら数分も経たないうちに、

巫女さんが某女優と入ってくる。

え? って感じ。

巫女さんはこのバーの常連ではあるけれど、
タイミングよく会えるのは珍しい。


かなり人が入っているせいで選択の余地もなく、
僕のすぐ右に巫女さん、その右に女優が座る。

ソウル・バーでこの女優を見るのは2度目だ。

巫女さんは、
夏目クン、久しぶりねぇとか言いながら、
キチンと女優さんを紹介してくれる。

女優さんはテレビなんかで時々見るけど、
話してみるととても気さくで感じの良い方。

僕は、巫女さんに、

ヘンリー・ミラーの北回帰線、シンさんの予言(ホントにそう感じたんだ)、
なんかを話す。

巫女さんは僕に、
夏目クンは、詩人だね、
と言う。

そんなことないです。
アホなことばっかり酔って言ってるだけ。

そして、女優さんに、臆せずに、

「あなたは、使者だと感じました」

と言ってしまう。

だって、会いたくてもなかなか会えない巫女さんを、
結果的にこのソウルバーに今夜連れて来たのは、

この女優さんだから。


あら、そう?

わたしね、「使者」とか、「使いのもの」って、時々言われるの。

夏目さんて、面白い感性持ってるのね(笑)。


巫女さんは最近自分の息子(成人)と
赤いバーのマスターとその彼女と
あるライブに行った話を楽しそうにする。

レトロなXXX食堂と草野球の話から、
明日の3時に、駒沢公園でAクンのチームの野球の試合があるのね、
応援に行くんだ、みんなで、とか、
そういう話になる。

(Aクンは皆の共通の友人だ。)

で、夏目クンのタバコ、良い匂いだけど何?

ゴロワーズです。 
黒タバコ、
葉っぱを寝かしてあんの。

ふーん、葉巻みたいね。


女優は、
僕のペルノーを見て、
珍しいわね、ペルノー飲んでる人がいるなんてさ、
一口飲ませて、
と言う。

飲ませてあげる。

クセの強い酒だね、と。

はい。

月は、天高く、あくまでキレイだ。


首都高3号線はいまだにいくつもの車をはべらせて、
妖艶に横たわっている。


女優が、先に帰る。
巫女さんを置いて。
朝5時起きで眠いんだと。

余計、この女優は今夜、
巫女さんを僕のところまで連れて来たお役目の、
使者だという気がしてくる。


午前3時過ぎ、
巫女さんは、
ワタシはこれから赤いバーに行くんだけど、
夏目クンも、一緒に来るよね(笑)?
と。

はい、ぜひ。


僕も、赤いバーは久しぶりだし、
あそこのマスターは礼儀正しくて大好きだから。

バーのもう1人の常連Bさん(このBさんも礼儀正しい人)と
3人でタクシーで赤いバーに。

友人が多い巫女さんは、
赤いバーでもモテモテだ。

着いたとたん、

いろんな人と社交が始まる。


Bさんは静かにカウンターの奥にひとりで座る。

どうしてよいか分からない僕だけが
カウンターのどこに座るかちょっと悩んで、
逆側の、2人の若い女性客の間にお断りを入れて座ろうとする。

そしたら、

いきなり、

それまで友人達と談笑していたはずの巫女さんが
(かなり強引に)僕の手を引っ張って、

自分の隣に座らせる。

あれ(笑)?

(僕というより、他の女性客に迷惑かけるなってことかも??)

でもね、席についてお酒を飲んで落ち着いた頃、
僕が最初に隣に座ろうとした逆サイドの女性客の1人が僕に言う。

「わたし、夏目さんのこと、すっごく覚えてますよ、ここで話したことあるもん」


へ?

僕は全然覚えてない。

キミ ハ ダレ ナンダ?

かなりかわいいけど。

でも、嬉しかった。 
そう言われて。

そういう夜なのだ。

たぶん、午前4時を過ぎた頃だろうけど、
やがてお店を終えたソウルバーのマスターも
やって来て、
皆で楽しい酒が続く。

その後は、もうあまり覚えていない。

(気がついたら、翌日午後3時に自分の家の部屋で寝ていた、というだけのこと。)

クソFXXXな仕事に比べて、
なんて楽しい酒なんだろうという夜だった。

十六夜の月は、どこにある?

午前8時ごろ、ようやく赤いバーを出た僕は、
柿本人麻呂の恋歌を口ずさみながら、
空にあるはずの、月を見上げる。

月はどこだい?

夜は明けたけど、あるはずだろ?

とにかく、

シンさんの予言は、的中したわけだ。

楽しい時間と空間を、僕は獲得したのだ。

吾妹子(わぎもこ)に
恋ひてすべなみ
夢(いめ)見むと
われは思へど
寝(い)ねらえなくに


(柿本人麻呂)

♪ テーマ曲 「Fly Me To The Moon」 by Frank Sinatra ♪

関連記事:

「ジャスミンと巫女」
「京方人(みやこかたびと)」
「ワイン・バーの夜」
「別れのドライブ 由比ヶ浜 そして真冬の風が吹く」
「マスタード色を夜空に塗りたくれ」
「31文字のラブレター(1)」
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# by y_natsume1 | 2009-02-11 21:05 | Moon

松本清張とマレーシアを結ぶ「点と線」

2009年2月7日(土) 朝。

この日の日経新聞朝刊文化欄に
松本清張の記事が載っている。

昨今の、小説復刊、映画化、ドラマ化などの再評価。

僕は1990年代後半のクアラルンプール駐在時代に、
マレーシアを理解しようとこの国に関連する書籍を何冊も読んだ。


その中に、松本清張の小説がある。

「熱い絹」。

後にも先にも、僕が読んだ清張の小説は、

この 「熱い絹」 だけ。

でも、とても面白かった。

まさに小説の舞台となったキャメロンハイランドで、

上下巻、一気に読んだ。



駐在中に読んだマレーシア関連本の中には、
尊敬する鶴見良行(哲学者・鶴見俊輔の従兄弟)の著作も何冊かある。

鶴見良行の本で最も印象的だったのは、

「マラッカ物語」。

ものすごく膨大な量の資料と現地調査のたまもの。

その本の443頁にはこう記されている――:

「(中略) 学問の細分化がもたらすこの難点を克服するには、学者にもっと広く読めと勧めても、おそらく無理だろう。 かれらは深く穴を掘るだけで精一杯だから。 とすると、土地言語(ブギ語など)に拠って学者が国際言語(英語その他)で書いた論文を読み漁り、他の土地の同種の事柄とつなぎあわせ(ブギとミンカバウ、マレーシアとフィリピン)、さらに民衆言語に翻訳し直すような、二次的報告書が必要になってくる。 松本清張、司馬遼太郎、陳舜臣氏らには、この種の仕事が見られる。」

(引用終わり)


「マラッカ物語」という驚異的な
歴史及び文化人類学的ルポルタージュ(?)の中でも、

僕にとってはこの部分が最も心に残った。

だって、鶴見良行の言うとおり、

清張の 「熱い絹」 は、
マラヤの当時の状況を、いわば民衆言語に翻訳し、二次的報告書の側面を
結果として持たせている本でもある、と感じたからだ。


そもそも当時の僕には、
異文化圏の人々(マレーシア人)とのコミュニケーションが
課題だったからでもある。


現地(マレーシア)で住んでいるときに読むと、
そんなふうに受け取ってしまうものなのかどうか、
今となってはよく分からないことだけど。

でも、そう考えた方が、ロマンチックでいいかも。


とにかく、僕にとっては、

鶴見良行を介して、
マレーシアと松本清張は交錯している。

マレーシアを介して、
鶴見良行と松本清張はリンクしている。

今回の松本清張の新聞記事を介して、
マレーシアと鶴見の本は僕の心に再びよみがえる。


清張の、日本を舞台にした 「点と線」 は
まだ読んだことがないけど、

そういうのも読んでみたくなった。

いや、待て待て。

それよりまず、またキャメロンハイランドに、
行きたい。

英国植民地時代の名残りを残す、
チューダー様式の、あのホテルに、また泊まりたい。

♪ テーマ曲 「サクラ咲く」 by 妹尾武 ♪

関連記事:

「熱い絹」
「境界線(ボーダーライン)はどこだ?」
「白川静という学者」
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# by y_natsume1 | 2009-02-07 09:33 | マレーシア駐在記

近所のソウル・バーにて

だいぶ前のことになるけど、2008年12月29日(月) 深夜。

自宅近くのソウル・バーにて。


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上の写真でカウンター席右端(向かって左端)にいるのが僕。

下の写真の、後姿のやつも僕。
疲れ果てた背中。

(顔はブラシをかけさせていただいた。)

このバーでよくお会いする某ミュージシャン氏が撮影して下さったもの。

嬉しいことに、ふと気づいたら、もう撮られてた。

セピアカラーの写真って、本当にステキだと思う。
(自分が被写体だから、というわけじゃなく。)


2002年ごろからずっと、
僕はこのソウル・バーにお世話になっている。

ミュージシャン氏とこの空間に、 感謝。

ありがとうございます。

♪ テーマ曲 「里の秋」 ♪

関連記事:
「ソウル・バーの夜 (20) ~やっぱり飲んだくれ~」

(補足)
今、そのミュージシャン氏の新譜CDを聴きながらこのエントリをUPしている。
とても、美しい、音。
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# by y_natsume1 | 2009-01-31 18:06 | 酒×酒

別れのドライブ 由比ヶ浜 そして真冬の風が吹く

2009年1月25日(日) 朝。

前回と逆に、今度は僕のたっての希望で、
王子(幼稚園6歳、体つきは大きく小学2、3年生と間違えられることもしばしば)と2人、
葉山、鎌倉の海岸方面へドライブ。

もうすぐ、6年以上お世話になった、
この黄色い車に別れを告げる。

だから、最後(になるだろう今回)のドライブに
王子を連れて鎌倉の海にどうしても来たかったのだ。


都内の自宅から第三京浜、横浜横須賀道路を経て、
1時間ちょっとで逗子、そして葉山に着く。

車で葉山・鎌倉まで来るのは2~3年ぶり。
(いつもは電車で来て酒を飲んでいるから。)

車中で最初は小田和正や加山雄三、
「76.1 InterFM Weekend Cruise」などをかけていたけれど、

助手席に座る王子の希望で結局、
ウルトラマンの主題歌シリーズに。

仕方あるまい。



葉山マリーナを通り過ぎる頃、
少々冬の海に否定的だった王子も興奮気味に。

渚橋を渡っているとその左側に、陽に輝く海と、
空気が澄んでいるからかキレイな富士山がくっきりと、 見える。

海と富士山、 なんて美しいんだろう。


渚橋を渡る前か、渡った後だったか、その辺りで王子が突然、
なかなかのセリフを発する。

「ね、音楽止めて!」

「え?」

「窓も開けて」

「いいよ、いいけど、どした?」

「波の音が聞こえないもん。 窓開けないと、海の匂い、しないから・・・・」

「あぁ・・・・ そうか。 そうだな」


ときどき、彼は、
当たり前といえば当たり前だけど、

感性のするどいことを言う。

音楽を止め、窓を開け、
車のエンジン音以外は特に音は聴こえない空間で、

波の音を楽しむ。

富士山の美しさを、めでる。

穏やかな、午前中の冬の海。

逗子のトンネルを抜け、
材木座海岸をゆったりと走る。



・・・・・ 由比ヶ浜の地下駐車場に車を入れ、

海岸で遊ぶ。


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風が強く、冷たい。

王子は、 走る。

そして貝殻を取る。

興奮している。 

大声で笑う。

僕は時々ぼーっと海を眺める。

2人は、駆ける。

止まる。

波打ち際を微妙に歩き、また走る。

2人でコンクリートの階段に座って
持参したポットの暖かいお茶を飲み、
お菓子をボリボリと食べる。

海の方角を指しては、あの辺りの空にいつも月がきれいに見えるとか、
後ろのR134沿いにあるあのカフェとあのバーはパパがよく利用するとか、
由比ヶ浜の昔の由来や鎌倉幕府の話、
そんなことを大人の友人に接するように、王子に話す。

(僕は王子を普段、場面によっては子供扱いしない(できない)でいるけれど、
    それがホントは良いのか悪いのか・・・・悩むなぁ )


浜辺では意外に人が大勢いる。

「誰もいない冬の海」 みたいな世界とは違って、

今の時代は今日みたいに天気がよければ、
犬を散歩させている人もいるし、
冬場でもボードセーリングやサーフィンの人たちで結構賑わっているんだな。


昔のフランス映画の、
「男と女」みたいな、

誰もいない冬の海のイメージは
決して嫌いじゃないんだけど。



ふと、何かを感じて、
由比ヶ浜の海岸からR134方面を見てすぐ目の前にあるビルの3階、
何度もお世話になっている 「お酒の神様」 という名の
オーシャンビューのバーに行ってみる。

なぜだか行ってみたくなった。

土日なら昼ごろにはお店を開けるはずだけど、
まだ開いてないことは分かっているのに、
なぜだか無性に行った方が良いような「気」がして・・・・・。



 ・・・・・・・ 違う。

お店の名前が。

窓ガラスから見える中の配置や家具類が。

同じビルの1階のカフェの前で掃除をしている
キレイなオネエさんに聞いてみる。

「あの、3階にあったXXXXというバーはどうなったんでしょうか?」

「あぁ・・・・ こないだ、閉めちゃったんですよ・・・・ 突然・・・、でしたねぇ・・・・」

「そうですか・・・・」


正直、驚いた。 

そして、複雑な気持になる。

自分の黄色い車のお別れドライブでやってきた海辺で、
馴染みのバーがなくなっていたなんて。


いつもお世話になっている和風小料理屋さんにも
もしや開いていたらと、久しぶりにご挨拶しようと行ってみたが、
やはりこの時間帯はまだ閉まっていて叶わず。


なんだか、そういう日なのかな。


王子は途中歩き疲れてぐずっていたのに、
六地蔵の近くで江ノ電が通ったのを観れて嬉しそう。



僕たちは由比ヶ浜の地下駐車場から車を出し、

R134のちょっとした朝の渋滞を、再び逗子方面へ。

渋滞といってもそれほど極端にひどくなくて、
かえって海をゆっくり眺め、楽しむことができる。

ここでも音楽を止め、 車の窓を、 開ける。

相変わらず冬の、いや、海辺の風は冷たいけれど、
空はどこまでも青く、陽射しは穏やかで暖かい。

海、   みなもが キラキラ 光っている。


逗子インターから横浜横須賀道路に乗って東京方面に帰ろう。

鎌倉で酒も飲まずに帰るのは珍しい。

今回は車だから仕方がない。

走りながら車中でオニギリを2人でほおばる。

王子は3個、僕は1個。

彼はよく食べる。

ちょっとした遠足みたいだな。


たった2時間、
幼稚園児の王子と、
動物園などもない、(江ノ島の水族館はたいていはパスする)
単なる海辺に行っただけなんだけど、

不思議な時間と空間を過ごせた気がする。


あの、今はもう存在しない「お酒の神様」という名のバーに感謝しているし、
由比ヶ浜や材木座の海岸にも、
今乗っている車にも、

感謝している。

ありがとう。



「ね、王子、 お酒の神様って、今はどこにいるんだろうね?」

「え? パパ、帰ったらまた飲むつもりぃ(笑)?」

「あぁ、 昨日のワインの残りを、な」

「しょうがないなぁ」


お酒の神様、 探したくなったからさ。

  いつか、どこかで、 また出会えるんだろうけどさ。


♪ テーマ曲 「白い砂の少女」 by 加山雄三 ♪
♪ テーマ曲 「明日 あの海で」 by 小田和正 ♪
♪ テーマ曲 「切ない愛のうたをきかせて」 by 小田和正 ♪
♪ テーマ曲 「夢の花」 by Temiyan ♪

関連記事:
「光明寺の調べが 材木座の海岸に届くころ」
「十六夜の月 於鎌倉」
「ゆる~いレゲエを鎌倉で」
「由比ヶ浜に 酒の神 在り」
「京の女に言ふ (2)」
「冬の日の朝」

「雨の鎌倉高校前駅にて(1)」
「雨の鎌倉高校前駅にて(2)」
「雨の鎌倉高校前駅にて(3)」

(今回の記事タイトルは「七五調」でお読み下さいませ)
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# by y_natsume1 | 2009-01-25 17:53 | 鎌倉湘南Seaside

映画のタイトル 考察その5 ボーンアルティメイタム

例えば、「ボーンアルティメイタム」。

なんや、それ。 どういう意味やねん、って感じ。

中身はとても面白かったけど。

最初韓国で英語で観たんだけど、

普通の日本人である僕には
よくわからないタイトル。

アルティメイタムが最後通牒のことだとわかったのは
後でネットで調べたから。

「ボーンスプレマシー」 (ボーンの優位性という意味らしい) もしかり。
よくわからん。



関連記事:
「映画のタイトル 考察その1 天国は待ってくれる」
「映画のタイトル 考察その2 プライベート・ライアン」
「映画のタイトル 考察その3 サウンド・オブ・サイレンス」
「映画のタイトル 考察その4 クレーマー、クレーマー」

「コリアの休暇 (8) ~江陵で清酒~」
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# by y_natsume1 | 2009-01-24 12:55 | 映画言いたい放題

マスタード色を夜空に塗りたくれ

2009年1月16日(金)。

極寒の深夜11時半ごろ会社を出て、
約3ヶ月ぶりに中目黒の バーZ へ。

というのも、

そこの雇われ店長Aクン(20代の若さ)が、
近々自分の店(食事処)を友人と2人で共同で出すので
バーZ出勤はあと数日で終わりだよ、
バーは閉めずに他のアルバイトでまわすんだろうけど、

と僕の馴染みのソウルバーのマスターに聞いたから。

ソウルバーのマスターはこうも言う。

ペルノーのソーダ割りを、
あんなクセのある酒を、
好きで何杯もお代わりして飲むのは、
自分が知ってる限り、
夏目クンとバーZのAクンの2人しかいないなぁ、と。

バーZ に入ると今回もうまい具合にカウンター席に座れる。

ペルノーのソーダ割り。

お互い、今まで不思議と携帯メルアドは知らなかったので、
その交換も。

僕がリクエストしたわけでもないのにAクンは、
僕の目の前のターンテーブルで
立て続けにブルーノートのレコードをかけてくれる。

いいね、いいね。 1950年代のジャズ。

まずは、ケニー・ドーハム 「アフロ・キューバン」

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(1980年代、ロンドンのクラブではこのLPをかけたりサンプリングしたりして踊るのが大流行してたらしく、その当時は「時代は変わったものだ」と思ったけど、それさえももはや昔の話か。 僕は20代の頃、このアルバムが大好きで、CDで毎日のように聞いていた時期がある。)




次に、 ソニー・クラーク 「クール・ストラッティン」

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(これも僕が20代の頃よく聴いていたやつだ。 ソニー・クラークの芯のある重いタッチのピアノがとても好きで。)


そして、お互いが共通して大好きなティナ・ブルックスの話で盛り上がる。
「トゥルー・ブルー」はいいよね、とか。


バーZ のトイレにはエロティックなカレンダーが飾ってある。
多摩川近辺のXXX食堂、とお店の名前が入っている。

ん? あの食堂といえば、 義理の弟がアマチュア野球の試合のあと必ずチームメートと皆で立ち寄る、あのレトロな食堂ではないか?

(僕は行ったことないけど、義弟からよく聞かされていた。)

Aクンに聞いたら、

そうですよ、僕も野球のあと、そこに3~4回行ったことありますもん、

レトロですよ、 むちゃくちゃ安い訳じゃないけど、そこそこだし、味も良いし、

とのこと。


今度、行ってみるかな。
その食堂の存在を知ってから10年以上にもなるけど、
まだ行ったことがない。


・・・・・ 中目黒の駅近辺の雰囲気は、
再開発工事とかでガード下のお店が殆ど全て立ち退きを余儀なくされ、
数年前とはまるで違ってきている。

そんな中で、
これからも会いたいと思うようなマスターのいる店が、
また一つ、中目黒から減るのかと思うと寂しい気もする。

(バーZはなくならないけど、このお店とAクンは僕にとっては最初からワンセットだから。)

このバーZ と Aクンにはとても感謝している。 

ありがと。

Aクンの門出を祝してペルノーをもう一杯。

♪ テーマ曲 「マイナーズ・ホリデイ」 by ケニー・ドーハム ♪

関連記事:
「7回目の記念日@中目黒」
「中目黒の夜が 明けた」
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# by y_natsume1 | 2009-01-17 16:40 | 酒×酒

冬の日の朝

2009年1月12日(月) 祝日。

朝、王子(6歳)の たっての希望で2人で車で出かける。

特にあてもなくミニドライブ。

外は寒いが暖かい陽射し。

キラキラ光る空気。

BGMにsachikoのCD「ガラスの空」をかける。

マーチンの生ギターを主体にした、シンプルでアコースティックな音。

子守唄のような優しい女性の声。

3~4年前は、彼女のライブ目当てで、
わざわざ鎌倉のバーまで片道1時間半以上かけて何度も行ったものだが、

いつ聴いても癒される声だ。

僕らの車が多摩川の土手沿いに来た頃、ちょうど
「冬の匂い」 がかかる。

車中で穏やかに、けれどしっかりと、響き渡る歌。

荘厳な感じさえ、する。

僕にはsachikoという人は冬の歌姫というイメージがあるぐらいで。

なぜか冬が似合う、歌声。

荒涼とした景色と、
ミスマッチなはずなのにミスマッチにならない暖かい歌声。


バックミラーで後部座席の王子をちらりと見やる。

彼は多摩川を眺めながら、お菓子をぼりぼり食べ、
彼なりに無言でドライブを楽しんでいるみたいだ。


平和な、空間。

朝日が輝くのなら、寒い冬の日の朝も、悪くない。

♪ テーマ曲 「冬の匂い」 by sachiko ♪

関連記事:
「清川村の歌姫 ~ミュージシャンの追っかけ~」
「好きなCD (7) ガラスの空 sachiko」
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# by y_natsume1 | 2009-01-12 19:02 | 日々の雑文

桂離宮とお酒と月と

2009年1月9日(金) 夜。

東京の大雨は夜9時過ぎにはほぼ止んでいたらしい。

10時近くに会社を出て空を見上げたら、
月が出ている。

それも結構高い位置に。

ほとんどてっぺん。

風が強いせいか雲はすぐに流され、
月が出たのだろう。

暦ではあと2~3日で満月のはずだけど、
既にきれいな形。

今夜の月は光が力強い。

月が射す夜、 だ。

「月子さん」(仮名)はどうしているだろう。
無事を祈ろう。


・・・・・ 久しぶりに自宅近くのソウルバーへ。

いつものカウンター席右端。

マスターやスタッフと、雨はもう止んだよって話から、
それに月も出てたよって月の話になる。

雨月物語、♪Fly Me To The Moon♪、桂離宮・・・・。

先日NHKの特番で観た桂離宮。 
月を見るための館。

なんて素晴らしい空間なんだろうと思った。

宮内庁に事前申請しないと見学できないそうだし、
僕らのような一般庶民が桂離宮でお月見をできるわけもないのだけれど、

憧れる。


カウンターで僕の左隣のアダルトな女性客(一人客)が
楽しそうに長居して飲んでいる(今夜は8時半から居るそうだ)。

時々話しかけられるがそれに応えるだけで僕からは話しかけない。

その人の顔つきは
キレイで魅力的なんだけど、

この店のマスターによると
三宿の黄色いバーの店主Aさんにそっくりだとかで
そのお客さんが帰った後で1人ウケまくるマスター。


マスターはおもむろにインディーズだけどさ、と
オススメCDを紹介してくれる。

客が僕だけになった頃を見計らって、
店内で全曲かけてくれる。

The Bawdies の
「Awaking of Rhythm And Blues」

これ、すっごくいい。
イキのいいロックというかリズム&ブルースというか。

ジャケットもむちゃくちゃカッコいい。
若い日本人バンドなのに全編英語の歌詞、
特にボーカルはソウルフルでシブイ。

気に入った(笑)。

ありがと、マスター。

そして、ストーンズのドキュメンタリー映画もすごくいいし、
DVDじゃなく映画館で観るといいよとマスター。

あぁ、あのスコセッシのヤツね。

マスターはUKロックは普段からあまり聴かないのに、
今回はオススメだねと。

画面が相当良かったらしい。



ペルノーのソーダ割り3杯。
ビール1杯。
マルボロライト。


帰ろう。


京の「みやこ」と 桂離宮 に思いを馳せ、

行けるわけもないのに
「月子さん」のところに今すぐ飛んで行きたい衝動をおさえつつ、

(それじゃまるで雨月物語の菊花の約(ちぎり)みたいか?)

ひんやりした夜の中、 歩いて帰る。

月が、射す夜。 

もう一度、 天を、 仰ぐ。

♪ テーマ曲 「月の重さ」 by Tsuki No Wa (vo. FUMINOSUKE) ♪
アルバム「Ninth Energy」より
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# by y_natsume1 | 2009-01-10 15:42 | Moon

好きな言葉についてのあれこれ

たとえば、

ナナオサカキの詩 「ラブレター」 
にある一節、

「菜の花や 月は東に 日は西に」

これはもともとは
与謝蕪村の作品、 だと思う。


たとえば、

西東三鬼の 「神戸」の「第8話 トリメの紳士」 の中の最後の一文、

「どこまでつづくぬかるみぞ」

これはもともとは
軍歌 「討匪行(とうひこう)」 の一節、 ではないかと推測する。

文学や詩の世界にも、
今の音楽業界で言う、サンプリングみたいなものがあったんだろうか。

影響を受けた、
オリジナル作品に捧げるオマージュ?

パクリとか、それほど深刻な話じゃなくて、
文脈や作品の流れの中で、
はやりことばを真似して言ったり、
それを記したりする程度の感覚なのかもね。


気がつけば気がついたで、多少フクザツ、かな。

ナナオサカキや西東三鬼の作品全体の、
リズムや響きが大好きなことに変わりはないんだけど。


♪ テーマ曲 「親指トムのブルース」 by ボブ・ディラン ♪

関連記事:

「ビート詩人 ナナオサカキ 逝く」
「無頼の短編小説 「神戸」 by 西東三鬼」
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# by y_natsume1 | 2009-01-01 17:51 | 日々の雑文




夏目芳雄の東南アジア・映画・ジャズ・酒などに関するよもやま話です。
by y_natsume1
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