自宅でずっと長く、日常生活で使うための器(主に酒器)。
決して高価なブランド物ではなく、
比較的安価ではあっても(むしろ安価なものばかり)、
自分が手に持ったときに、
使いやすくて、
口縁(ワイングラスで言うリム)にも違和感がなく、
心底気に入って、
理屈抜きになぜか
手になじむもの。
一旦、しっくりくるのがわかったら、
欠けたり割れたりするまでは、
長年、ひたすらそれらを大切に使い続けている。
気に入ったからといって、
(青緑色のチューブ絵具のときと違って)
ただ飾って眺めるのではなく、
実際に 使う。
僕のは美術工芸品ではないし 使うための物だからだ。
どんな器で飲もうと、
飲んでお腹に入れば同じじゃないか、
とは思っていない。
手になじむ器で飲んだなら、
その際の空間全体の雰囲気や、時間の流れも含めて、
明らかに自分の満足度、幸せ度が違ってくる。
だから、そういう器を見つけたり、出合ったりすることは
自分にとっては 人生でとても大事なことなのだ。
欠けたり割れたりするのも、
洗う際に特に乱暴に扱っているつもりはないから、
いわゆる寿命としか言いようがない。
そもそも気に入った器だけを長い間繰り返し使っているのだから、
使用頻度も他の器に比べて極端に高いのだ。
欠けたとき、割れたときは、
長年親しくしていた人に急に去られたみたいな感じがしてそれは悲しい。
悲しいけれど同時に、僕はその器にとても感謝して、
今までありがとうと心中でつぶやく。
用途別にはだいたい次のような状況。
1. コーヒー用の大きめのマグカップ。
大きいサイズのが好き。
最初はたまたま自宅にあった大きめの乳白色のもの。
手触りや飲み心地が良く、10年ぐらいは使ったと思う。
それが口縁部分から下にかけてひび割れて引退。
次は、よくお世話になっている古着屋さんのノベルティグッズのマグカップを使っていて、
これもとても気に入っていたのだけど、
洗っていて欠けたので、
あちこち探して、
あまりしっくりこないマグカップを2、3種類試した後、
今使っているマグカップにやっとたどり着いた。
これは、古着屋さんのノベルティグッズと同じ型、同じサイズのもの。
真っ白の無地。
シンプルなデザイン。
手になじむ。
特に 取っ手部分のサイズがピッタリで持ちやすくて最高。
つや消しみたいな表面で、ツルツルしていない肌触りがいい。
もう5年ぐらい使い続けている。
2. ウィスキーグラス。
最初のグラスは、
若い頃に、友人か誰かの結婚式の引き出物で頂いたもので、
同じのが2個のワンセット。
結婚式の引き出物にふさわしい、ペアのグラス。
偶然にも、僕にとっては重さや手にした感触が抜群で、
いたく気に入って
20代半ばから、20年ぐらい、引越のたびに連れ歩き、
かなり長く使っていたやつ。
引き出物として結構 質の良いものだったのかもしれない。
ウィスキーだけでなく、
(今はもうあまり飲まなくなったけど当時は)
麦焼酎のお湯割りまでこの気に入ったグラスで飲んでいた。
このグラスを使うのが楽しくて、
中身のお酒の種類は二の次になるほど、
それぐらい好きだったということだ。
いつだったか、
1つは既に割れていて、
2つ目も、
もうさすがに寿命だったのかもしれないが洗っている時に割れたので、
では、次のを、と思って
実際に手に取ってみることのできるリアルなお店で、
例えば浅草橋や日本橋など、いろんなお店で物色した。
けれど、
なかなかコレというのには出会えず。
少々高価なバカラを買ってみたが、それも感触がいま一つだった。
バカラなら有名だしフィットするかもと浅はかにも思ったが、
そううまくはいかなかった。
そのうち数年たって、
賭けみたいにネット通販で2、3種類買ってみた中で、
一つだけ、
ようやく気に入ったのを見つけて今も使っているのは、
チェコ製の ラスカボヘミアのグラス。
バカラよりかなり安い。
けれど しっかりした重さといい、
大きさといい、
模様のカット具合とその触り心地といい、
自分の好みにピッタリだし、
最初に気に入って使っていた結婚式の引き出物のウィスキーグラスと
よく似ていて、
ようやく 手にしっくりくるものを見つけたと思えた。
割れた時のためにと、
同じものをもう一個スペアとして買ったほど、
気に入っている。
もう7年以上使っていると思う。
そして、気に入ったウィスキーグラスだからといって
ストレートやオンザロックスでは飲まない。
開高健みたいに食道癌になりたくないしね。
たいてい炭酸水で割ってハイボールで少しずつ飲むことがほとんど。
世の中にはハイボール用のグラスもあるし、
実際、デュワーズのロゴが入ったそれも持ってはいるけど、
それはあまり使わず、
このボヘミアングラスで ハイボールで飲む。
ウィスキーグラスの使い方としては邪道かもしれないけれど、
自宅&自分使用だし、僕はその使い方が気に入っているから、
それでいい。
ウィスキーが進む。
3. ビール用グラス。
自宅での瓶ビール用だからその前提で、
ジョッキではなく、
小さめのやつ。
町中華や気の利いたバーで使われている、あのタイプのものがいいのだ。
シャカリキになって探そうと思えば見つかるのかもしれないが、
どうもご縁がない。
口縁の薄さが大事なポイントなのに、
なかなか気に入ったものを見つけられずにいる。
最近手に入れて使っているのは、
キリンのロゴが入った、
レトロ版の小さめのグラス。
口縁はそれほど薄くはないけど、かなりよきグラス。
それと、ギネスビール専用の、
ギネスのロゴの入ったグラスは同じのを2つ持っていて、
これも大のお気に入り。
350mlの1缶の量が、泡も含めてちょうど入る大きさ。
ギネスビールの最大の特徴である細かい泡を楽しむために、
わざわざ缶からグラスに注ぐ、
そのためのものだから、泡も含めてちょうど入るようになっている。
ギネスビールの缶の中には、グラスに注ぐときに泡を細かく出すための仕掛けで、
小さなボールみたいなのが入っている。
さすが。
4. ワイングラス。シャンパンフルート。
ワイングラスは洗うのも難しいし、
実際洗っている最中によく割れたり、ステムの付け根で折れたりするので、
今は心底しっくりくるグラスはない。
ホントは大きめの直径で深くて、
香りを楽しみやすいのが好みだけど、
今ある中で主に使っているのはかなり小さめのグラス。
取引先相手から15年ぐらい前にプレゼントされたもの。
品物自体はとてもいいものなので、けっこう長く楽しめてはいる。
シャンパンフルートはまずまず。
5. 日本酒の盃、お猪口、ぐい呑み。
日本酒は40代ぐらいの頃から本格的に好きになって飲んでいる。
日本酒ならとにかく盃がカッコいいのではないかと思って
浅盃ばかりいくつか買ってはみたものの、
どうも自分には合わないと悟った。
深盃なら少しは印象が違ったのかもしれないけど、
浅盃はなぜか飲みにくく思えてしまって、
しかも持つには軽すぎるというか、
持ったときに実感が薄いのだ。
相性の問題とでもいおうか、
とにかく僕にはしっくりこない。
理屈ではない。
ま、お燗で飲むことも多いし、
盃でないなら、お猪口か、
もう少し重い、ぐい呑み、ということになる。
以前は神楽坂でたまたま安く買った 全体が乳白色で
ところどころに桜色の薄い文様が入った
深盃にも似たぐい呑みを、
胴の深さ、角度、高台の高さ、口縁の感覚まで気に入って、
10年近く使っていたが、
やはりこれも使いすぎての寿命だったのか
洗っていて真っ二つに割れたので、
今は比較的好きな、他のものをあれこれ使っている。
例えば、
館山で買った、深く神秘的な青色の、
上から見込みを見ると大きめの深盃のようにも思える、いわば
盃とぐい呑みの中間のような形のやつ(たぶん分類としてはぐい呑みになるのだろう)とか、
黒と焦茶の、手になじみやすい 陶器のぐい呑み、
8年前に富山で日本酒の成政と一緒に購入した、銀色の、たぶん錫のぐい呑み、
ネット通販で勢いで買った、見込みの中央に定番の蛇の目があるお猪口、など。
でも、日本酒を頂く器としては、まだまだベストなしっくり感ではない。